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金平茂紀
1977年 TBS入社。
社会部、「ニュースコープ」副編集長、モスクワ支局長、ワシントン支局長、ニュース23編集長を務め、2005年から報道局長、2008年からはアメリカ総局長として、アメリカを中心に取材を続ける。
2004年度「ボーン・上田記念国際記者賞」を受賞。

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#21 30年前の「報道特集」が報じていた原発内労働

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労災認定を求めている梅田さんご夫妻

こんにちは。暑い夏は、冷たいワインと読書で乗り切りましょうね。
さて、32年前に原発で働いていた原発労働者が、その後の健康被害で労災認定を求める軌跡を追った今回の特集をみて、さまざまなことを考えさせられました。そのなかの一つのことだけを記しておきます。実は「報道特集」が放送をスタートしたのは1980年の10月からですが、何と原発内労働者の問題については、「報道特集」では1981年の5月に(何と30年前だ!)きちんと取り上げていました。そのごく一部が特集内でも使われていましたが、故・料治直矢キャスター、吉永春子ディレクターといった「伝説上の」記者らが、現場の原発労働者らに体当たり取材を試みていました。すごい迫力です。「日当がいいからね」というのが当時の原発内労働者の言葉でした。けれども、できれば危険な場所では働きたくない、との本音も感じられました。当時は映像にボカシを入れるなどということはほとんどなかった時代ですが、当時の映像の再使用にあたってはボカシが入っていました。うーん、難しい判断ですね。30年も前の取材VTRですから、ひょっとしてインタビューに応じた人たちも相当な年齢に達している、あるいはもう亡くなった方もいるかもしれない。そういう場合の「顔だし」の判断は何によるのか。
大震災の発生から4カ月が過ぎました。大津波の被災や被災地の復興、原発事故の処理、何一つ「出口」は見えていません。だから、僕らは「継続して報道する意志」を持続しなければならない。本当にそう思います。「忘却」はひたひたと僕らの精神を蝕んでいます。
7月9日放送のスタジオ部分を採録しておきます。
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報道特集 2011年7月9日 放送 スタジオ部分
番組冒頭あいさつ
金平:こんばんは。「報道特集」です。
   原発のなかで働く労働者をめぐっては、」これまでもこの番組でお伝えしましたが、
   今日お伝えする、32年も前に原発で働いていたある男性のストーリー、実は、私
たちのこれからの運命にも深くかかわるポイントを含んでいます。のちほどの特集
でお伝えしますが、まずは今日のニュース、久保田さん。

特集1腹心が語る菅内閣「末期」 VTRふり
金平:政治のゴタゴタをこれまで散々見慣れてきた私たちも今週、菅内閣で起きた一連の出来事は、流石に限度を超えていて、怒る気力も無くしたと感じた方々も多いと思います。こうした中で菅総理の腹心とされる人物が、私たちの取材に応じ政治の混乱の舞台裏を語りました。

特集1腹心が語る菅内閣「末期」 VTR受け
日下部:金平さん、考えてみれば村山内閣も、震災の対応を巡って、相当批判されていました。今回の震災と阪神大震災では被災した面積が全然違いますよね、さらに地震だけでなく今回は、津波も原発もあったわけですから、単純に比較して、こっちが悪い、あっちが悪いというのはフェアではない気もします。さらに菅内閣と閣僚の関係について批判がありますけど、これも政治主導を打ち出した民主党の問題であって、発端は鳩山政権にあったわけですね。ただそういった点を踏まえても、村山政権に比べて菅政権は機能不全に陥っていて、決して被災者の立場に立っているとは思えないです。
金平:率直な感想を言うと、「大人と子供」というか、政治家の資質とか粒(つぶ)ということを考えて言っているのですが、阪神大震災の時の小里震災担当大臣と知事の会談の映像が今のVTRでもありましたけど、それと今の大臣と知事の映像を見比べて見ると、今、言った「大人と子供」みたいな、ものすごくギャップがあるなというような印象はあります。
日下部:村山さんに直接聞いたのですが、当時の自民党の重鎮、後藤田正晴さんが震災直後に村山総理にこうアドバイスしたそうです。「地震発生は天災だが、今後の復興に失敗すればこれは人災だ。しっかりやって欲しい」と。(自民の重鎮が社会党の首相にアドバイスしたのですから、仲間内で)足の引っ張り合いをしている民主党とは大違いという気がします。
金平:下村審議官が言ったことをちょっとだけ補いますとね、菅総理の人格とか人間性についての攻撃を今なされているけれども、それと原発を再稼動させるという本質論はどっちがいったいどっちが大事なんだという事を考えて欲しいということを、下村審議官は、言っていましたね。


特集2 32年前の原発被曝 ある男性のたたかい VTRふり
日下部:次です。まずはこちらをご覧ください(フリップを構える)。これは1979年に原発で働いていた男性が体の不調を訴え、病院で診察を受けた時の結果です。ちょっと読みにくいですが、「全身倦怠感」「鼻出血」つまり鼻血ですね。こういった症状が記されています。この男性はその後20年経ってから重い病気に見舞われています。男性はこれを原発労働で浴びた放射線による健康被害だとして、労災の認定を求めています。30年以上前の原発労働は男性の健康にどの様な影響を与えたのでしょうか。
特集2 32年前の原発被曝 ある男性のたたかい VTR受け
日下部:VTRの中に70年代の原発内での作業の映像がありましたけど、目にはゴーグルもつけないそのまま晒していますよね。それととにかく線量計の警告音をうるさいといって、他人に預けてしまうという、「鳴き殺し」という、とにかく放射線管理の杜撰さというものを象徴するような影像だったんですけれども、考えてみると丁度1ヶ月くらい前に金平さん、福島原発内で働いている方を取材をしましたけど、置かれている環境というのは実はあまり改善していないんだということを伺いました。
金平:私が聞いた原発労働者も暑いと息苦しくなってマスクを外すことが、外してもいいよと言う風に研修で言われたということを言っていましたが。かえって、もしかすると30年前よりも状況というのは悪くなっている部分もあるんじゃないか。例えば作業時の被ばく線量の上限が引き上げられたりということがあります。
それにしても、梅田さんが言っていましたが、労基署とか監督官という人たちのところまで、原発労働者の声が届いていないと言っていました。もっと知って欲しいみたいな。今のVTR中にあった労基署が、テレビ電話で労災認定の審査をするのは、本当に実態を知るのであれば、私は、「本当にそれで大丈夫か?」ということを素朴な疑問として感じました。
日下部:その梅田さんに労災が認定されるかどうか、判断は早ければ今年末にも下される予定です。もし労災が認定されなかった場合ですが、梅田さんは裁判を起こすことも考えているそうです。
金平:「報道特集」ではまた来週。




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