こんにちは。
先週は山口県上関町の町長選挙を取材していました。

上関原発建設予定地から祝島をみる(筆者撮影)

とても美味しい! 鳩子てんぷら(筆者撮影)
電源立地交付金なしには町づくりができないと信じ込んでいる人々の声を聞いて回るうちに、原発という巨大技術が、地域の共同体のありようを翻弄してしまっている力学を感じました。選挙結果は、大差をつけて現職の柏原重海町長が三選されました。ただ、テレビ山口が行った出口調査では、原発推進派の町民の何と71%が、福島第一原発事故によって「意識が変わった」と答えていたそうです。敗戦の弁を語った山戸候補は、「上関の常識は世間の非常識」と語り、町民の反発を呼んでいたとか。何だか「なし崩し」という言葉を僕は今、思い浮かべています。上関町が真の意味で活性化することを僕は願っています。豊かな自然の町でしたから。
さて、上関町に名物食品のひとつ「鳩子てんぷら」というのがありました。僕も食べましたが、揚げたてのこれがとても美味しい! で、品名の「鳩子」ですけど、これはNHKの大昔の朝の連続小説「鳩子の海」(1974年~75年)のロケが同町で行われたことにちなんでできたものだそうです。その「鳩子の海」のストーリーですが、広島原爆で家族と記憶を失った鳩子(斉藤こず恵が子役で出ていた。のちに藤田美保子)が、人々の愛情に支えられながら上関町ですくすくと育ち、何と、成人してから、原子力のエンジニアの男性と結婚するという話だったんですって。そうだったかなあ。あまり覚えていない。とすれば、「鳩子の海」は、原子力の軍事利用(=広島原爆)を乗り越えて、原子力の平和利用に寄り添っていく「鳩子」が、何だか戦後日本の暗喩みたいですよね。そこに今、原発を誘致しようというのだから、それをみて鳩子は今、何と言うのでしょうか。鳩子てんぷらを食べながらふと思いました。
スタジオ部分を採録しておきます。
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「報道特集」
2011年9月24日放送 スタジオおこし
○オープニング
金平)こんばんは、「報道特集」です。
台風15号が日本列島を縦断して、各地に被害を残していった1週間でした。
東京は今日は晴れた秋空が広がりました。さっそく今日のニュースです。
○特集1 リード
金平)特集です。福島第一原発の事故が起きたあと、原発建設の是非について、これまで
以上に論議が白熱化する中、新規原発建設予定地のひとつ、山口県上関町の町長選
挙の投票が明日行われます。
原発推進の国策によって翻弄され続けてきた町を取材しました。
○特集1 受け
竹内)上関町の人々にとって、3月に起きた原発事故以降、なんらかの心の変化はあったんでしょうか?
金平)あったんでしょうね。ただ現地で取材していると、推進派・反対派を問わず、テレビの前で本音をなかなか公言しずらいような。特に推進派の人たちというのは、とってもピリピリしていて、3月11日の原発事故以降、地域の対立とかひび割れというか、そういうのはかえって深まってしまったんじゃないかという印象を持ちました。
日下部)とにかくわずか人口3000人あまりの町が、30年あまりにわたって二分して
いる。本当3000人というのはみんな顔見知りというような自治体だと思うんで
すけど、それが30年分裂してるというのは非常に深刻だと思うし。確かに住民の
意思は尊重されるべきだと思うんですけど、原発問題というのを、小さな一つの自
治体が背負いこむにはあまりにも巨大かつ複雑な問題なんじゃないかと。
金平)これが上関町のさっきいった資源エネルギー庁が出してた「夢」という広報誌なん
ですけど、ここに「原発マネーがこんなに役立ってますよ」というような、ご紹介
したような記事が載ってるんですよね。ところが中を見ると、延々とさっきご紹介
したようなものがあって、今見るとかなり一方的な内容なんですよね。ちょうど事
故が起きた月に出たものなんですけどね。こういうのを見ると、町作りへのいわば
「善意」とでもいうものが、取り込まれてしまってるような印象を受けましたよね。
ですから、選挙結果が明日出るわけですけど、仮にその選挙結果がどちらに出たと
しても、ノーサイドというか、そういう事態はとても難しいかもしれないなと思い
ましたよね。
○特集2 ふり
日下部)さて、次の特集はミャンマーです。地図でご覧頂いてるように、中国と国境を接
しているミャンマー。中国は中東やアフリカからの資源調達の中継拠点の一つとし
てこのミャンマーを捉えています。とかく内政問題が注目されるミャンマーですけ
れど、今日は豊富な資源と安い労働力を背景に、各国の資源争奪戦争の舞台になっ
ているミャンマーに焦点を当てます。
○特集2 受け
金平)とても珍しいミャンマー内部の取材だったんですけどね、この特集で言われたこと
というのは、独裁政権、軍事独裁政権の下での開発支援で、外国は一体どういう風
に関わるべきなのかという非常に重要な基本的な問題を提示してるような気がした
んですけど。要するに儲ければいいのかと。いくつか欧米の企業が進出していると
いう話がありましたけど、かえって実は独裁政権の方が、そこに開発するときに都
合がいいというようなことがあるんですよね。日本はそういう教訓を踏まえて、今
後は、早い者勝ちとか中国に遅れをとったとかそういうことではなくて、もっと地
元の国民に利益を還元するような方向で関われればいいなとVTRを見ながら思い
ました。
日下部)私はVTRを見ていて、第二次大戦中に援蒋ルートというミャンマーを通るルー
トがあったんですけど、それが中国のパイプライン建設を見て思いましたけど。と
にかく、中国の資源外交というのはなりふりかまわないですね。だからミャンマー
だけじゃなく、色んなところで地元で摩擦を起こしてるんですよね。ただVTRの
中でミャンマーの人が、日本やアメリカが1流で、中国は2流レベルというような
ことを言っていましたけど、それで日本が安心してはダメだと思うんですよ。とに
かく中国は今豊富な資金力を使って、とにかく技術レベルも大きく変化してるので、このことを決して忘れてはいけないと思いますね。
竹内)ミャンマーの一般の市民の方もVTRに登場していましたけど、これまであまり、
見たことなかったんですけど、飾り気のない素朴な印象を受けますね。
日下部)そうですね、ああいう表情もあまり我々は見たことなかったですよね。
金平)とても珍しい内部取材だったと思いますけどね。
竹内)以上特集でした。
○スポーツ部分
岡村)実はこのコースは宮里藍選手が高校時代に史上最年少優勝を果たした思い入れのあ
るコースなんですよね。
金平)ゴルフについてコメントなんて出来る立場じゃないんですけども、ゴルフ場が震災
でぐちゃぐちゃになっちゃったっていうのを見て、今、見ていたら、とってもきれ
いに修復していて、本当に管理する人たちが一生懸命やったんだなというのを、直
前に大雨も降ったしね、よかったなというふうに思いました。
○エンディング
金平)台風が東京を直撃した日、大勢の帰宅困難者が出ましたよね。僕は山口県を取材し
てたんですけど、竹内さんはどこに?
竹内)私は帰宅途中でツイッターの情報を見ながら帰るルートを探しましたね。
日下部)私は中国の山の中にいてネットもなかったんで、日本に帰ってきて大変なことが
起きてたんだと思いました。
岡村)私はちょうどお休みだったので一歩も家から出られませんでした。
金平)「報道特集」来週は30分繰り上げで午後5時からです。それではまた。