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金平茂紀
1977年 TBS入社。
社会部、「ニュースコープ」副編集長、モスクワ支局長、ワシントン支局長、ニュース23編集長を務め、2005年から報道局長、2008年からはアメリカ総局長として、アメリカを中心に取材を続ける。
2004年度「ボーン・上田記念国際記者賞」を受賞。

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#71 節電とがれき 

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こんにちは。この夏の節電に関する問題、そして震災がれきの処理の問題。19日の特集2本はいずれも、大きな意味では、<3・11>の事後プロセスで生まれてきている問題でした。そこに大きく影を落としているのは、原発事故による放射能です。英語でNIMBYという表現があります。Not In My Back Yardの頭文字をとった言葉です。廃棄物処理施設やごみ焼却場など、都合の悪いものを他所に設置するのはいいけれど、自分の家の近くには絶対イヤだと主張する人のことをいいます。このNIMBYという語は拡大解釈されて、自分勝手とか地域エゴとかいう文脈で使われることもあります。2本目の特集、震災がれきを南の島に輸出するという話は、取材すればするほど荒唐無稽な話で、実現性は薄いと思いますが、たとえば原発の立地自体、そのようなNIMBY的な、差別的な構造を再生産してきたではないか。あらためて、そのようなことを考えさせられました。では、19日の放送のスタジオ部分を再録しておきます。
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■5月19日放送スタジオ部分再録
<オープニング>
金平:こんばんは。「報道特集」です。ご覧いただきましたように、関東地方の一部で断水が続いています。このところ電気や水の安定供給に関するニュースが増え、改めてインフラの大切さを思い知らされます。続いてはこちらのニュースです。

<特集1 リード>
金平:特集です。政府はきのう、この夏の節電目標を発表しました。私たちはこの夏をどう乗り切ればいいんでしょうか。節電が求められている関西地方と、去年計画停電を経験した関東地方での取り組みを取材しました。

<特集1 受け>
日下部:今回、大阪の本当に小さい町工場を取材したんですけれども、ただでさえ景気低迷とか大企業からの締め付けで経営が厳しい中に、今回の節電でしょ?本当に死活問題なんだな、と感じました。よく言われているように、小さい町工場が、実は世界や日本のトップレベルの技術を持っていて、こうした技術や品質を守るためには、例えば24時間機械を動かし続けなきゃいけないとか、一定の温度に保たなきゃいけないという、どうしても節電出来ない部分があるんですね。今回取材した工場の社長さんですけれども、経営者としてはですね、一刻も早く原発を再開して欲しいんだけれども、個人として、あるいは親としては、こんなに原発に頼っていいんだろうかって、非常に複雑だという思いを語ってくれました。脱原発を含めね、今後のエネルギー政策にはこういった人たちの声にも耳を傾けて欲しいなと思いました。
竹内:そうですね。そして、節電っていうと、電気を消したり、エレベーターやエスカレーターを止めたりと、暗かったり不便だったり我慢といったイメージがあるんですけど、城南信用金庫の取り組み、ずいぶん前向きで、しかも明るいですね。
金平:実は、経済産業省の専門委員会の話なんですが、家庭向けを含めて、電力の小売りを全面的に自由化する方針で一致したって言うんですね。これは経済産業省のこれまでの方針を根本的に転換することなんですけども、需要者側というか一般家庭が、電力をどこからでも購入できる選択肢の拡大に繋がれば、これまであるさまざまな問題の解決に繋がる可能性があるんだと思いますね。

<特集2 リード>
日下部:東日本大震災で発生したがれきは、被災した3県で2200万トンあまりと言われています。震災から1年以上が経過した今も、がれき処理のメドがたっていないのが実状です。そんな中、驚きの計画が持ち上がっています。全体の半分近く、実に1000万トンものがれきを、南のある島に輸出するというのです。

<特集2 受け>
竹内:取材した中野記者です。中野さん、そもそもこの計画には実現性はあるんですか?
中野:最初ですね、国内でがれきの処理が進まないならば、海外で処理するべきじゃないかと、徳一氏らのグループがいるというので、非常に興味を持って取材を始めました。しかし、取材を進めるとですね、VTRにもあった通り、廃棄物処理法の大きな壁があるため今のところ実現性は非常に厳しいと思います。その上に、こちらのパガン島を見ても分かる通り、インフラも何もないまさに孤島という場所できちんと環境を守りながら廃棄物処理が出来るのか、これも大きな課題だと思います。さらにここは日本の統治下、戦前の日本統治下ですね、大きな戦争の場所になったところなんです。戦争から70年近くが経った今、がれきを輸出する先になっているところも、ちょっと違和感を感じたりもしました。
日下部:当事者はね、法改正を求めるなんか言ってるんですけども、とにかく国内で引き取り手のない廃棄物を海外に出すというのは、法律とかもあるし、倫理的にもいろいろ問題あるんじゃないでしょうか。
中野:この件とはちょっと違うんですけど、日本はかつてフィリピンに産業廃棄物を不法に輸出して国際問題になった経緯があります。国内処理の原則には、そうした反省も込めて考えなければならないと思います。先進各国もですね、こういう原則を持っていまして、こうした原則というのは、こうした経緯を考えると簡単には変わらないんじゃないかと思います。
金平:VTR見ていて、荒唐無稽に見える計画だというふうに私は思うんですけどね。その、こういうものが出てくる背景っていうのは、やっぱり国内での広域処理が思うように進まないっていう事情もあるんでしょうかね。
中野:そうですね。震災の発生以降、原発事故以降ですね、政府の説明に信用が出来ないという「不信の構造」があるんだと思います。このため広域処理に回されるがれきっていうのは、きちんと放射能の影響がないものと政府は説明してるんですけど、それでもやはり、受け入れたら健康に影響があるんではないか、という不信感はどうしても根強いと。そして、そういうことが影響して、受け入れが進まずに、街中にまだ1年以上経った今も、がれきが散乱している状態、そしてこういうことを背景に、がれきがあることを懸念して今回の計画が進んだんじゃないかと、私は思います。
竹:以上、特集でした。

<エンディング>
竹下:さて、いよいよ明後日、21日の朝、九州南部から福島県南東部にかけての太平洋側で、金環日食が見られるということなんですが。
岡村:楽しみですよね。いつも寝てる時間ですから、早起きを。
日下部:皆既日食と違って、空が暗くなるということはないみたいですけれども、とにかく、目を傷つけないようにね。必ず専用の日食用のめがねで観察して下さい。
金平:僕ね、87年に沖縄の万座毛というところで、金環日食、見てたんです。取材したことがあるんですけどもね。急に涼しくなるんですよ。
「報道特集」ではまた来週。



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