



それにしても、ちょっとこれはひどいなあ、と思ったのは、これほど重要な安全保障関連法案を提出するにあたり、国民にきちんと説明して、これからの国会審議やさまざまな場での熟慮を経て、国民の判断を仰いでいこうと言うときの、あの記者会見の進行の仕方は何なのだと。あれは、ほとんど記者会見のフリを装った「会見モドキ」だと個人的には思いますね。幹事社の記者から口火を切り、「それでは幹事社以外の方」とか言って、わずか3社(読売・フジテレビ・テレビ東京)の顔見知りの記者をあてる(それ以外の記者たちはあらかじめ排除されている)報道官なる人物の(そしてそれを容認している内閣記者会の面々の)ダメさ加減は、もはや恥ずかしいレベルに達していると思いますね。「丁寧な説明」の実態とは、僕らの国ではこのようなものか。5月16日の放送のスタジオ部分を再録しておきます。
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<あいさつ>
金平:こんばんは。「報道特集」です。
私たちの国のありようが根本から変わるかもしれない法案が国会に提出されました。
国会審議よりも先に、アメリカに出かけて行って成立が約束された法案です。
ご覧いただきました大阪の住民投票とともに、後ほどの特集でお伝えしますが、
続いてはこちらのニュースです。
<特集ふり>
金平:続いての特集は、大転換しようとしているこの国の安全保障政策です。
小林:集団的自衛権を行使できる安保関連法案を閣議決定し、国会に提出した安倍政権、自衛隊はどう変わるのか。
<特集1 リード>
金平:特集です。
日本の安全保障政策が根本的な転換を遂げようとしています。
安倍政権は、集団的自衛権の行使を柱とした安保関連法案を閣議決定し、
国会に提出しました。
戦後長きにわたって、専守防衛に徹してきた自衛隊はどう変わっていくのでしょうか。
検証しました。
<特集1 受け>
小林:日下部さんは、安倍総理の会見について取材に行ったそうですね。
日下部:官邸周辺の反対集会を終えてから、官邸の中で安倍総理の会見を聞いたわけですけども、官邸の外と中の空気の違い、これが非常に印象的でした。官邸の中は、これだけ重要な法案にも関わらず、非常に物事が淡々と進んでいくなという感じを受けて、記者会見でもですね、メディアとの緊迫したやり取りもありませんでしたし、そういった時間もなかったんですね。あと、気になったのは、安倍総理が反対意見に対して、また「レッテル貼り」という言葉を使っていましたね。VTRにもありましたけど、「戦争法案といった無責任なレッテル貼りは全くの誤り」と言って批判していたんですけども、反対意見について単純にレッテル貼りだと退けてしまうことは、議論を封じ込めてしまうことになるんじゃないかということに非常に危惧していて、まあこれからの国会での議論では丁寧で具体的な説明が求められると思います。
金平:そのレッテル貼り、戦争法案という言い方ですけども、山崎拓さんに僕は聞いたんですけども、彼は自民党の国防族のドンと言われていた人ですよね。その人物にインタビューしたのは、首相記者会見の翌日だったんですけども、「あれは戦争法案といっても過言ではない」とあっさり言っていたので正直驚きましたけども。あとですね、現場の自衛官ですね。あるいは、退職された自衛官の方たちが、非常に今回のことについて疑問の声がでているということがあるんですね。実は、昨日私、自衛隊のOBの方と話したんですけどね。少なくとも今の自衛隊は創設以来、1発も弾を撃ってこなかった、それから1人も犠牲者を出していないし、1人も殺してないと、そのことに対してすごい誇りを持っているんだっていうね。自衛隊という名称にも誇りを持っていて、それが、よそに出かけていくとなると、自衛隊じゃなくて国軍になっちゃうじゃないかとね。そういう指摘をされていたと。そういう意味でも現場と政治の間に乖離というか隔たりがあるように感じました。
<特集2 リード>
日下部:次です。大阪市を分割再編するいわゆる大阪都構想。大阪市民211万人を対象とした過去最大の住民投票が明日行われます。誕生から120年を超える政令指定都市の存続を巡り市民は重い選択を迫られています。
<特集2 受け>
小林:取材にあたりましたMBS毎日放送の大八木記者です。よろしくお願いします。
投票率に関わらず、一票でも多い方が市の行く末を決めるということですが、そういった点も含めて、通常の選挙とは違うようですね。
大八木:そうですね。基本的には公職選挙法のルールが適用されてはいるんですけど、一番の違いは明日も活動できるというところなんですね。賛否が拮抗する中で、今週の半ばから両陣営とも全国から動員をかけてどんどん人が大阪に入ってきている状況で、明日も投票所が閉まる8時ぎりぎりまで賛成、反対支持を呼びかける状況が大阪の町で続くと思われます。期日前投票の投票率もかなり高まってきていまして、行かれてる方も多いんで関心も高くてですね。気になる投票率なんですけども、70パーセントを超えることも考えられるかなという状況です。
日下部:ただね。いわゆる都構想というのは部外者はもちろんですけども、当事者である大阪市民の人々も理解が進んでないようにも見えたんですけども、そういったなかですね、市民は何を判断材料にしたらいいのかね、難しいところですよね。
大八木:取材していましても、大阪都構想が分からない、もしくは何で判断したらよいのかもたくさん聞かれました。役所の仕組みを変えるといわれても、ぴんと来ないのはもちろんそうなんですけども、現実に明日投票を迎えますし、大阪の今について問題提起しているのは事実な訳ですから、そこを、何か変えなきゃ、変わらなくていいというところだけじゃなく、一歩進んで、せっかくの機会ですから自分の暮らし、町に思いをいたして一票を考えていただけたらと思いますね。
金平:仕掛けた側はね、場を設定したのはもちろん橋下さんなんでしょうけども、その一方で、意思表示をすることの大切さというものがあると思うんですね。最近の地方選挙とかあるいは国政選挙を見ていると投票率がものすごく低いでしょ、それは民主主義を自ら破壊しているようなものでね。いうまでもないんですけども、住民投票の主役は橋下さんじゃないですからね。それから反対している政党の人でもないし、大阪の市民の人が自分の基準に従って、外から上から降ってくるんじゃなくて、自分の判断に従って投票所に行かないと、結果うまれたことに対してNOが言えなくなりますよね。どうもご苦労様でした。
<エンディング>
小林:カンヌ映画祭ですけども、最高賞パルムドールに日本からは是枝裕和監督の『海街diary』がノミネートされています。家族がテーマなそうなんですが、4姉妹の四女役の広瀬すずさん、台本は渡されないで撮影したんですって、
金平:是枝さんは、あえて台本を渡さないで自然にドキュメンタリーみたいにやる手法をとる。もともとニュースのドキュメンタリー作っていましたからね、そういったところも意識しているのかもしれないですね。
日下部:日本の作品、最近パルムドールから遠ざかっていますけども、パルムドールの発表ですけども、現地時間の24日に発表されるということです。
金平:楽しみですね。「報道特集」ではまた来週。