


みなさん、お久しぶりです。と言うのも、かれこれ一か月以上「報道特集」のこのサイトからすっかり遠ざかってしまっていたので。毎週の放送のスタジオ部分を再録して掲載する作業を、僕はADさんの協力を得ながら続けてきたのですが、何だか正直、空しくなってきたのですね。自分たちのやっている仕事に矜持を持ちたいと思いながら、記録として残しておく作業は、未来の世代にとって、あるいは周囲の人たちにとって、きっと何かの役にたつかもしれないという思いがあって始めたのですが、それがなかなか思うようにはいかない。どれくらいの数の人がこの放送のスタジオ部分でのやりとりの再録を読んでおられるのかもわからない。手ごたえが感得できない。となると、やっていても無駄なのではないか、と漠然と感じ始めたのです。気持が揺れています。安保関連法案が衆議院で強行採決された週でもありました。僕は遠くドイツのドレスデンという場所で取材を続けていました。将来、おそらく戦後の日本の歴史の転換点になるかもしれないこの採決の瞬間、少なくとも意思を表明しようとしている人々の間で、その空気の変化を共有していたかったのですが、叶いませんでした。この寂寥感はうまく表現できない種類のものです。しかし、気を取り直しました。ぶつぶつ言っている暇があるならば、きちんと取材を続けていればいい。取材しなければならないことが山ほどある。今までの自分の経験を考えてみれば、世界のどこにいようと、いつだって自分は遠くをみながら、何度も足元で躓きながら歩いてきたじゃないか。
7月18日の放送から、スタジオ部分の再録作業をまた再開します。
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7/18 報道特集O.A 【スタジオ原稿】
■金平オープニングあいさつ
金平 こんばんは。「報道特集」です。
おととい、安保関連法案が衆議院を通過しました。
国会のそとで多くの人々が抗議の声をあげるなか採決が強行されました。
民主主義とは、読んで字の通り、民が主人公の政治システムです。
それがおかしくなっていないか。
のちほどの特集でお伝えしますが、続いてはこちらです。
■CM②前ふり
金平 このあとは、今週も安保法案の特集です。
小林 安保法制は、
衆議院で採決が強行され、可決。
「平和の党」を掲げてきた公明党や支持者の人々は、
どう考えているのでしょうか。
■特集1リード
日下部 今日最初の特集は安保関連法案です。
国民の半数以上が反対し、
安倍総理自らも「国民の理解が進んでいない」と認める安保関連法案。
与党は今週、衆議院での採決を強行しました。
平和の党を掲げ、与党の一角を占める公明党、
そして支持母体である創価学会の人たちは
国会の動きをどう見ているのか取材しました。
■特集1うけ
小林 可決の瞬間、国会前でデモの取材をしていたんですが、
いてもたってもいられなくて駆けつけたという方が本当に多かったです。
可決については怒りももちろんあるけども、日本の政治もここまできたか、
というさびしさ、わびしさがあるという言葉が印象的でした。
日下部 VTRでも紹介したデモに駆け付けた女子大学生が
採決の時の議員の表情に意思が感じられなかったと話していたが、
私も国会内で取材していて、似たようなことを感じました。
与野党が激しく対立する法案と言うのは、
その法案自体がいいか悪いかは別として
与党議員は採決されたあとは、達成感や高揚感などが
これまでの取材の経験からしてはあるんですけど、
今回はそれが感じられない。 なんだか静かなんですね。
そして個人の議員に聞くと、あれはちょっと。とか、ああすればよかったかも。
弁明の言葉ばかり返ってくる。
上の決めたことには従うという今の議員の姿を
あの女子大学生は鋭く見抜いていたのかもしれませんね。
金平 僕は実は今週ドイツで取材をしていて今朝帰国したばかりなんですが、
海外でも日本の動向に関心が集まっています。
これはニューヨークタイムズの国際版ですけど
大きく報じられています。一面に出てるんですね
『日本は戦争の遺産をかなぐり捨てて、軍の足かせを取っ払った』みたいに
はっきり書いてある。
ドイツの新聞でも、時間が無いんで触れませんけど、
これはイタリアの新聞ですね、イタリアの新聞でもはっきりと、イタリアの有力新聞レプブリカですけど
『海外派兵、平和主義にさようなら、安倍首相の転換で広場に抗議』と
非常に日本のゆくえに懸念を表明している。
それが、日本に帰国してけさの新聞をみたら、
新国立競技場の問題にシフトしていて、
当事国なのに、空気の移り変わりが速いんだな、と正直感じましたね。
これはメディアの問題でもありますが。
さきほどの情報では、共同通信の最新の世論調査で、
安倍内閣の支持率が急落して37.7%になったそうです。
■特集2リード
金平 次です。戦時中、沈没した戦艦「陸奥」をご存知でしょうか。
千人以上が犠牲となった大惨事ですが、軍が徹底的な隠蔽工作を行い、
当時、ほとんどの国民がその事実を知ることはありませんでした。
戦後70年、この陸奥の運命は、今を生きる私たちに、
何を問いかけているのでしょうか?
■特集2うけ
小林 取材にあたった、RCC 吉住記者です
日下部 私以前にミッドウェー海戦に参加した
ゼロ戦パイロットの取材をしたことがあるんですけど。
ミッドウェー海戦の惨敗を隠すために、パイロットの人は国内の軍の施設にしばらく軟禁されていたというんですね。
身内の兵隊さえ信用していなかったんですよね。
国家権力と言うのは不都合なことを隠すためには何でもやるのだなという印象を持ちました。
吉住 それと同じようなことが陸奥の爆沈後も起きているんですね。生き残ったほとんどの乗組員が秘密保持のために上陸することは許されず、船に軟禁されてその後、激戦地に送られたという話もあるんです。
70年以上前の戦時中に起きたことと思われるかもしれませんけど、おととしの特定秘密保護法の成立や今週の安保関連法案の衆議院通過などの動きを見ていると「国防」とか「安全保障」という大義があれば今でも同じような事が起きかねないんじゃないか、もしかしたらすでにそいうことが起きているのかもしれないとすごく怖く感じました。
金平 まさに前半の特集でも、イラク戦争に関する文書の政府にとって不都合な部分を
隠ぺいしていたことが明らかになっていて、とても怖いですね。
吉住 それと同時に私が印象に残っているのは箕浦さんが「騙される罪」ということを言われていたんですけど。箕浦さんはこういうふうに言われているんですけど
傍観するだけではなく『しっかりとした自覚と知識を持って立ち向かわなければ
また騙される』と仰られた。
お兄さんの死の真相を隠されるという経験をされた箕浦さんの言葉は
とても重かった。私に言われているようでどきっとさせられたんですね。こういうことって特に、メディアの仕事に携わる我々は
ほんとにこの言葉を肝に銘じなければならないと思います。
■エンディング
小林 新国立競技場の計画、白紙となりましたけどこのニュース、アスリートはどう捉えているんでしょうね。
林 スポーツ界からもいろいろな反応が届いているんですけど、元陸上競技の為末さんは自身のブログに決定したことだから覆せないという空気があったが再検討されることは嬉しく思うと書き込んでいました。
金平 結局責任がうやむやになっちゃうんじゃないかなという印象もありますけどね。
『報道特集』ではまた来週。