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金平茂紀
1977年 TBS入社。
社会部、「ニュースコープ」副編集長、モスクワ支局長、ワシントン支局長、ニュース23編集長を務め、2005年から報道局長、2008年からはアメリカ総局長として、アメリカを中心に取材を続ける。
2004年度「ボーン・上田記念国際記者賞」を受賞。

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#244 「幕引き」なんて、とんでもない。 

アメリカ大統領選挙の取材で、今はワシントンDCにいます。外から日本をみていると、何だか日本のメディアの健忘症ぶりを嘆きたいような心境に陥ってしまいます。甘利明議員の電撃辞任からまだあまり日が経っていないのですが、ものすごい勢いで「幕引き」モードが広がっているように感じるのは僕だけでしょうか。ニュースというものは新しい出来事によって常に更新されていくものですが、それが「上書きモード」になっていないか。「挿入モード」であれば、辛うじて過去の出来事は残されているのですが、「上書きモード」では次々と過去の事実が消されていく。今しかないわけです。真相=実際に何が起きていたのか、それはまだまだ明らかになっていません。わけ知りに「これは事件にならないよ」などと解説することだけは避けたいものだと思います。後半の特集の朝鮮高校ラグビー部の記録、放送後にたくさんの反応がありましたが、口汚い罵りのコメントは論外としても、その反応ぶりの多さに、僕らの国がいま覆われている一種の病理のようなものを感じました。1月30日放送のスタジオ部分を再録しておきます。
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「報道特集」 1月30日放送 スタジオ部分

<あいさつ>
金平:こんばんは。「報道特集」です。甘利大臣の辞任、政界を中心に早くも幕引きの空気が流れています。記者会見でご本人が「中間報告」と言っていましたが、真相究明が終わっていいはずはありません。特集で詳しくお伝えします。続いても雪関連のニュースです。

<特集1 リード>
金平:特集です。週刊誌に報じられた、金銭授受疑惑を受けて、アベノミクスの司令塔、甘利経済再生担当大臣が一昨日電撃辞任しました。大打撃を受けた形の安倍政権は今後どうなるのか。様々な角度から取材しました。

<特集1 受け>
小林:ここからは、政治部の岩田官邸キャップとともにお伝えします。安倍総理は甘利氏を最後まで慰留したということなんですけども、その背景には一体何があったということなんでしょうか? 
岩田:安倍総理は甘利さんをものすごく信頼しておりまして、内閣支持率が下がってもいいから頑張ろうと、慰留をしたんですけども、政権の内部にはですね、この甘利大臣を失うことに非常に大きな危機感があったんです。今週の初めなんですが、ある総理に近い人物がこんなことを言っていました。「こうなったら守れる限り守る。今回の話は甘利さん個人がどうのこうのではなくて、TPPという国益がかかっている。国会審議、通らなかったら日本にとって、ものすごいマイナスだ」というんですね。TPPというのは安倍政権にとって単に経済的な意味があるんではなくて、中国を念頭に置きながら、日本とアメリカが中心になって、12の国が連携を強めていくという意味で、外交そして安全保障の意味でも大きな意味をもっているんですね。このTPPが失敗すれば、経済、外交、そして安全保障というあらゆる面で政権の戦略が狂ってくるという重大な事態になるだけに、甘利さんを辞めさせたくなかったということなんですね。
日下部:政権にとってそれほど重要なTPPを、今後、石原大臣が引き継いでいくわけですけど、党内からも不安視する声があがっているわけですね。
岩田:今回の大臣交替で、内閣の構造というのが、ガラッと変わるんですね。これまでは安倍総理を麻生副総理、菅官房長官、甘利大臣。今回、甘利大臣の後を継ぐ石原大臣は、その総裁選挙を安倍総理と戦ったライバルだったんですね。当時石原さんは自民党の幹事長だったんですけども、その総裁を支えるはずの幹事長が、当時の谷垣総裁を差し置いて、立候補するというのはどういうことなんだと、厳しく批判しまして、当時、平成の明智光秀だとレッテルを張るほど、微妙なところがありまして、安倍総理にとってはこの新しい布陣を機能させることが出きるのか、正念場だと思います。そして、もう一つ、私、甘利大臣が辞めた日の夜なんですが、タクシーに乗ったんですけども、運転手さんがですね、「甘利さんも被害者ですよね」って話しかけてきたんですよね。もしかしたら、同じように感じてらっしゃる方も多いかもしれないんですが、そのくらい政府、自民党側の狙い通りに世論に与えるマイナスのイメージをですね、最小限に抑えるダメージコントロールがうまくいっていると思うんです。しかし、本当に甘利さんは被害者なのか、そして、ここまま幕引きでいいのか、野党側はさらに安倍政権も追及していけるのかどうか、本当に存在意義が問われてくると思いますね。
日下部:私、会見ずっと出席してたんですけども、甘利さんの言うとおりだとするとですね、何の警戒心もなくですね、大臣室で簡単に金品を受け取ってしまう、非常に驚きましたね。やはり、李下に冠を正さず、でですね、現金はもちろんですけども、羊羹だって安易に受け取るべきじゃないと感じますけどね。
金平:私は堀田力さんにお話を伺ったんですけどね。これは非常に明快で、このケースは典型的な斡旋であって、これをやれないならば、何のために斡旋利得罪を作ったんでしょうかとまでおっしゃってたんですね。斡旋利得の場合は、堀田さんによると、国会議員の権限については質問権があるというね、そういう広い解釈で捜査しなければならないと強調されてましたですね。ただ、今の世の中にはいわゆる「御用ヤメ検」と言われるような人達もいるわけで、堀田さんは、検察がきちんと役割を果たして欲しいんだということを再三強調されてましたですね。「ハメられた論」とか、あるいは同情論とかが蔓延してるようですけども、今のこの段階で幕引きだっていうのは、とんでもないことだと私は実感しました。ご苦労様でした。

<特集2 リード>
日下部:次です。この年末年始に大阪花園ラグビー場で開かれた、全国高校ラグビー大会。ラグビーの高校日本一を決めるこの大会に、一般の高等学校ではない学校が出場していたのをご存知でしょうか。長く公式大会に出られなかったこの学校が、晴れの舞台に立つまでの日々を追いました。

<特集2 受け>
小林:取材に当たりました、高橋記者です。あの朝鮮学校特有の行進の姿。日本人としては少し、驚きをもってご覧になったかなという方もいらっしゃったと思うんですけども、あの場所で自分たちのルーツを否定しないことが、大きなプライドなんだなと感じましたし、そういったところから、違う者同士の理解っていうものが進んでいくんだろうなって思いますと、とてもグッとくるシーンではありましたね。
高橋:あの行進はですね、運動会でも行われているもので、今回ラグビー部員たちは一度も練習せずに花園に臨んだということです。東京朝鮮ラグビー部はこれまでに4回東京都予選の決勝で敗退していて、5回目の挑戦でようやく花園への切符を手にしました。ちなみに同じ朝鮮学校である大阪朝鮮高校は、これまでに9回花園に出場している強豪校として知られています。
日下部:私にも昔からの在日コリアンの友人がいるんだけど、普段気づかないんだけど、やはり進学、就職の時にね、彼らは我々に感じないような深刻な悩みを持ってるんだなと感じましたけどね。
高橋:ラグビー部員たちも進路についてはそれぞれ悩んでいましたね。VTRに出てきたキャプテンのヤンソン君はラグビーを辞めて大学に進学すると話していましたが、中にはスポーツ推薦を受けて強豪大学に進む生徒いるそうです。現在、朝鮮学校に通う生徒の数は減ってきています。全国で高級学校に通う生徒はおよそ1450人。この12年でほぼ半数に減少しています。
金平:VTRを見ていて、とっても濃密な人間関係を見たような気がするんですね。例えば日本人として純粋に応援している辰野さんだとかね。高橋さんは、実際に取材をしてみて何を感じましたか?
高橋:生徒同士は日本語で話をしていますし、日本の漫画を読んだり、音楽を聴いたり、一見すると、日本の高校生と変わらない生活を送っています。ただ話を聞いていますと、北朝鮮という国が、日本の社会でどう見られているのか、報道などを通してとても理解していると感じました。その一方で、朝鮮学校の中には、また違った独自の勉強を受けているという現状があります。北朝鮮と日本。その狭間にいる彼らにとって、日本の高校生とは違った種類の葛藤を抱えているんだなと、そういったものを垣間見ました。
金平:ご苦労様でした。

<エンディング>
小林:最後こちらの映像をご覧いただきましょう。この映像は、先日イタリア沿岸警備隊が、エーゲ海で難民を乗せた白いボートを発見し、まさしく救助している様子を収めたものなんです。こちらのボートはほとんど沈んだ状態だったということなんですね。
金平:あれはたまたま、イタリアの警備隊が行ったから助かったけど、もし見つからなかったら、溺れてしまってね、ひどいことになっていた。
日下部:今年に入ってから、エーゲ海だけで200人以上の方が亡くなってるということで、まだ一か月足らずでね。
金平:わずか一か月で200人でしょ。極寒の海にね、それでも逃げたい難民の人たちの思いっていうのは、絶対に忘れてはいけないですね。
「報道特集」ではまた来週。



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