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日下部正樹
1985年 TBS入社。
政治部、香港支局長、北京支局長、外信部デスクなどを務め、2010年9月までは、ソウル支局長。

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国罵とメディア

「今回の事故をきっかけにネット中心に
大きな革命が静かに起きるのではないか、そんな予感がします。」
日本の大学に籍を置く中国人教授は、
何度も「革命的」という言葉を使いました。
「事故に対する批判は外国の報道より過激で強い。
中国のネット世論が一番厳しい姿勢です。
世論の示し方が変わった。革命的なことです。」
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先生の言う事故とは中国温州市で起きた高速鉄道の事故のこと。
先生は事故をめぐるネットを中心とした
中国のメディアの動きに非常に注目しています。

200人以上の死傷者を出した鉄道事故については
鉄道省をはじめとする当局の事故処理をめぐって
中国国内で激しい批判の声が上がっていることはご存知だと思います。
事故直後、ろくすぽ調査もせず
車両を埋めようとした当局の動きに
「証拠隠滅だ」と激しく噛み付いたのは、
大手メディアではなくネットニュースでした。
事故現場に近い温州南駅では
遺族に取材してはパソコンやスマートフォンを駆使して
最新ニュースをネットにアップする記者の姿が目立ちました。
皆「80后(バーリンホウ」と呼ばれる
80年以降に生まれた若い記者たちです。
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中国当局にとって都合の悪い現場を
地元記者が入り乱れて取材する光景は、
私が中国に駐在した90年代には見られなかったものです。

当初はガス抜きとばかりネットニュースの動きを
黙認する姿勢を示していた中国当局ですが、
党や政府の息がかかった大手メディアまでが
鉄道省を批判するにおよび本格的な報道統制に乗り出しました。
それでも世論の怒りを背景に
メディアによる当局批判はくすぶり続けています。
一連の当局批判の中でも
広東の地方紙「南方都市報」の記事には驚かされました。
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鉄道省の対応のお粗末さを最大限の侮蔑表現で批判したのです。
日本のメディアは「くそったれ!」と訳していましたが、
時と場所によってはそれ以上の意味を持つ激しい罵りの言葉ですよね。
魯迅はこの言葉を「国罵」、中国を代表する罵りの言葉と言ってます。
確か大躍進政策をめぐって毛沢東と彭徳懐が
廬山で激しくやりあった時にふたりの口から発せられたのも
同じような(より直接的な?)罵りの言葉でした。
国家のトップがこんな野卑な言葉でやりあうとは
中国共産党のある側面が伺えたような気がして興味深かったものです。
毛沢東が面と向かって罵声を浴びせられたのは、
これが最後だったのでしょうね。多分。
(心のなかで誹っていた者はそれこそ星の数ほどいたでしょうが・・・)
その後、文化大革命を経て毛沢東は新中国の皇帝となり、
「野人」彭徳懐は迫害の末、失意のうちに世を去ります。

話がそれましたが、
南方都市報が使った言葉はそれほど激しいものだということです。
統制のイメージが強い中国当局ですが、
かねてから国内のネットメディアの動きにはそれなりに気を使っていて、
批判の矛先が党中央や中央政府に向けられない限り、
民意を知るすべとしてむしろ利用してきた面も否定できません。
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しかし、
いまは「80后」、かつては「小皇帝」と呼ばれた
怖いもの知らずの一人っ子世代が
社会の中核を担うようになり始めた今、
過去の経緯や権威にとらわれない批判や要求の声が
さらにネット上を賑わす事は間違いなさそうです。



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