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日下部正樹
1985年 TBS入社。
政治部、香港支局長、北京支局長、外信部デスクなどを務め、2010年9月までは、ソウル支局長。

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牛仔褌故事

牛仔褌とは何でしょう?

中国語を多少かじったことのある方なら
ご存知でしょう。
漢字を一文字ずつ英語に訳すと
答えが見えてきます。

牛=Cow 仔=Boy 褌=Pants
そう、牛仔褌とはジーンズのことです。
bPgcX_ca2w.jpg
久しぶりに表参道に行き、
次の予定まで時間があったので、
若い頃ちょくちょく顔を出していた
古着屋さんを覗いてみました。

古着屋さんと言っても
扱っているのはビンテージと言われる
ファンにとって垂涎モノばかり、
特にジーンズの品揃えが凄い。
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中でも人気なのは
リーバイスの501と言う品番のジーンズ。
前開きがボタン留めの
定番中の定番です。
501の品番は
もう100年以上使われていますが、
日本に本格的に出回ったのは
ほんの30数年のことです。
そのきっかけを作ったのがこの本。
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「Made in USA Catalog」
何故か読売新聞社から
発売されたこの本は、
まだ日本では手に入りづらかった
アメリカ製品とライフルスタイルを
紹介したもので
若者たちの熱狂的な支持を受けました。
本が発売されたのは1975年5月、
一ヶ月前の4月には
サイゴン陥落があったのですから
今考えるとこの熱狂が
妙に脳天気にも思えます。
いずれにせよ
表紙の真ん中を飾った501は
私にとっても
マストアイテムとなったのです。
G7z7CScMWt.jpg
余談ですが、先日アップルの
スティーブ・ジョブズさんが
亡くなられた時、誰も彼もが
我こそは真のジョブズシンパだとばかりに、
その業績をとうとうと讃えたのには、
何か鼻白む思いがしたものですが、
彼が黒のタートルネックと
リーバイス501の愛用者だと知って
妙に親近感が湧きました。
Mt5QvEmQoe.jpg
リーバイス501の伝説は1873年、
ゴールドラッシュに沸くアメリカで
二人のユダヤ人
(リーバイ・ストラウスと
ジェーコブ・デービス)が発案した
ポケットを銅のリベット(鋲)で
補強した作業ズボンについて
特許を得た時から始まります。

ジーンズも
ユダヤ人の発明だったのですね。
ちなみに同時代のユダヤ人を調べると・・・

マルクスは資本論の続刊を執筆中
フロイトはウィーン大学の学生でした。
マーラー、フッサール、ベルグソン
さらにピューリッツァーも
この頃の人なんですね。
プルーストは2歳か・・・
hI6p27dTnP.jpg
丈夫なリーバイ・ストラウス社製の
作業ズボンは人気を博し、
もっとも品質の良い生地を使ったものに
501の品番が付けられます。
もともと褐色の
キャンバス生地だったものを
青いインディゴ染めにしたのは、
染料の藍に防虫効果があるため
とも言われますが
真偽の程は定かではありません。
いずれにせよ1900年代に入ると
自然染料は殆ど使われていませんから
あまり関係有りませんが・・・

定番と言われる501ですが、
時代によって少しずつ姿を変えています。
Qsym3vQHpM.jpg
第二次大戦以前の501は、
ベルトがわりにサスペンダーボタンがあったり、
尾錠がついていたりと
作業着としての姿を色濃く留めています。
リベットも
せっかく特許を取ったのだから
という訳ではないでしょうが、
現在のものよりふんだんに使われています。
NlT1F34KCq.jpg
おしりのポケットのリベットは
自動車が普及するにつれ
「シートを傷つける」という
クレームが出てなくなりました。
面白いところでは
前開きの下の部分についていたリベット。
YOdOQK0yxt.jpg
これは焚き火の際熱くなり、
大事な部分をやけどすると言う理由で
なくなったと言われています。
本当でしょうか?

また第二次大戦大戦中は
政府による物品統制により、
ジーンズに使われる糸やリベットについて
徹底的に無駄を省くよう迫られます。
登録商標であり
リーバイスの顔とも言える
バックポケットの弓型のステッチは
糸の無駄遣いだとされ、
窮余の策として
ペンキで模様が描かれていました。
当然洗えば消えるので
ペンキが残っているものは
現在高値で取引されます。
写真のジーンズは完全に消えています。
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下の写真も大戦中のリーバイス。
前開きの部分のボタンが
金属を節約するため
真ん中をくりぬいた
ドーナツ型のボタンに
差し替えられています。
圧倒的な物量を誇っていたはずの
アメリカでも
このように細かな指示が出ていたのです。
EIbeOBdEAI.jpg
その後の朝鮮戦争でもベトナム戦争でも
リーバイス501が
仕様の変更を迫られたという話は
聞いたことがありません。
第二次大戦とは
そういう戦争だったのですね。

戦後、
洗えば激しく色落ちし、
しかも縮んでしまう
不完全な衣料品であるジーンズは、
まず若者のこころを捉え、
やがて世代を問わない
日常着として世界を席巻します。
一方で大量生産が進むにつれ、
501が持っていた
作業着としての無骨さは薄れ、
手作り感は失われてゆきます。
ジーンズコレクターの多くが
ジーンズの完成品と口を揃えるのが、
50年代から60年代にかけて
作られたリーバイス501です。
77UgGNyXdM.jpg
ジーンズの定番501は
現在アメリカでは作られていません。
(委託生産など例外はあるようですが、)
2003年、アメリカ国内に
残されていたリーバイスの自社工場が
すべて閉鎖されました。
効率化・合理化のために
アメリカの民族衣装とさえ言われた
ジーンズの国内生産を
あっさりやめてしまうのは
ある意味アメリカ的と言えるかもしれません。
0uo9XkoGQz.jpg
Made in USA Catalogを手にした時
私がアメリカの匂いを嗅ぎとった品々。
ジーンズやワークウェアやスニーカー。
それらのほとんどが現在
アメリカ以外の国で生産されています。
いまMade in USA Catalogを作ったら、
それはかつての私がそうだったように
若者の支持を得るのでしょうか?
それ以前にカタログ自体が
成立しないかもしれませんね。



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  • 田さん
  • 2011/12/09 18:56
 直近の2回(Obiとジーンズ)は完全に日下部さんの世界ですね、 全然役に立たないけど、気持ちが入っていて、とても面白い。
 先日、用もなく立ち寄った本屋の店頭には、当たり前のように黒いタートルネックのジョブズ様が鎮座していました。そしてその辺りから別の、熱量の高い、異様な視線を感じました。
 木村政彦です。ジョブズの隣に配置されていたのです。
 何という布陣。
 強烈なコントラストに惹かれ、思わず購入してしまいました。勿論、日下部さんお薦めの「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」の方を。これは面白いね。
 しかし攻撃的なディスプレイだったなー。何にも考えていないだけかな。
 では、また。

  • 田さん
  • 2011/12/09 16:28
 この2回(Obiとジーンズ)は完全に日下部さんの世界ですね。全然役に立たない内容だけど、気持ちが入っていて、とても面白かった。真骨頂です。
 先日、特に目的もなく入った書店の店頭には、当たり前のように黒のタートルネックのジョブズ様が鎮座していました。そしてその時、熱量の違う別の視線を感じました。何とその隣にあの人が配置されていたんです、そう木村政彦。なんという布陣。その強烈なコントラストに惹かれ、思わず購入してしてしまいました。勿論、日下部さんお薦めの「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」の方を。これは面白い。
 それにしても攻撃的なディスプレイでした。何も考えていないだけなのかな。
ではまた。