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日下部正樹
1985年 TBS入社。
政治部、香港支局長、北京支局長、外信部デスクなどを務め、2010年9月までは、ソウル支局長。

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恭喜発財

今年の春節は1月23日でした。
ご存知の方も多いでしょうが、
月の満ち欠けに基づく太陰暦(旧暦)の
一年は354日ですから、
太陽暦(新暦)に合わせると
春節は毎年1月下旬から
2月中旬くらいの間で日付が異なります。
中華圏最大の年中行事で
中国・台湾やシンガポールはもとより
韓国ではソルラル。
ベトナムではテトとして
(ベトナム戦争時のテト攻勢のテトです。)
新しい年を盛大に祝います。
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日本は明治5年12月に
暦の切り替えを行なってから、
正月を太陽暦の1月1日に
祝うようになりましたが、
東アジアに於いては
日本だけが例外とも言えます。
(沖縄では一部で
 旧正月を祝っているそうです。)
それにしても
日本の暦の切り替えは
布告の翌月実施という慌ただしさで行われ
相当混乱したようです。
太陰暦の明治5年12月3日が
急遽、明治6年1月1日とされたのです。
ドタバタと改暦を進めたのは
財政難に苦しんでいた政府が
公務員の給料を一ヶ月分
浮かすためだったという説もあります。

閑話休題。
春節当日、横浜の中華街に出かけてみました。
関帝廟には香の煙がたなびき
多くの華僑や在日中国人・台湾人が
初詣に訪れていました。
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あちこちで新年のあいさつが聞こえます。
「新年好!」「龍年好!」
でも一番耳にしたのはなんといっても
「恭喜発財!」でした。
もともと香港や広東の人が使う
「今年も儲けましょうや。」という意味の
何ともダイレクトな挨拶なんですが、
今は中国中の人が使っているみたいですね。
だだ発音が
広東語だと「コン・ヘイ・ファッ・チョーイ」なのに対し、
標準語だと「コン・シー・ファー・ザイ」と
北京語には促音がないので
広東語に比べなんか元気がありません。
SrbVlq8F_X.jpg
それにしても10年以上前
私が北京駐在していた時は
北京では「恭喜発財」という挨拶は
ほとんど耳にしませんでした。
むしろ北京のインテリたちは
金儲けしか考えていない香港人の挨拶だと
見下したような面もあったのです。
それがいまや全国共通語になりつつある。
世界第二の経済大国になった中国。
「儲けましょう。」という挨拶の方が
人々の気持ちにぴったりくるのでしょうか。
DJpZVk9s_N.jpg
私は香港と北京で
あわせて6回、春節を迎えました。
(韓国でもソルラルを体験しました。)
前述した通り春節は年によって
一ヶ月位の幅でズレるわけですが、
現地にいると言葉が示すとおり
春節が冬と春を分けている事を
肌で感じることが出来ました。
春節までが寒さの底で
休みがあけると毎年不思議と春めいてくる。
これは太陽暦の正月では味わえません。
日本の正月では迎春などと書くのが憚れます。
2HHZDubvSf.jpg
さて春節というと爆竹がつきものですが、
当局の規制などがあって中華圏で
自由に焚けるのは台湾やマカオくらいでしょうか。
最近、中国では市民からの突き上げもあり
かなり規制が緩くなっているようですが・・・

香港も市街地での爆竹は禁止されています。
禁止された背景を調べてゆくと
1960年代に遡ります。
当時、中国大陸は文化大革命の真っ只中。
イギリス領だった香港にも紅衛兵が登場し、
反英闘争を繰り広げます。
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信じられないことですが
あの香港で爆弾テロが相次いだのです。
そこで香港政庁は
火薬の取り扱いを厳しく制限し、
春節の爆竹もとばっちりを受けたのです。
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庶民の不満を抑えるために
香港政庁が爆竹の代わりに用意したのが
毎年、春節二日目の夜に
ビクトリアハーバーで大々的に
開催される花火大会だというのです。
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もうひとつ
香港での春節の思い出は「お年玉」です。
香港では「利是=ライシー」と言います。
日本で「お年玉」は大人が子供に与えるものですが、
香港では与える範囲がやたら広い。
子供はもちろん、
会社の部下やマンションの管理人、
そして行きつけのレストランの
ウエイターや料理人まで。
特にレストランで「利是」を忘れると
一年間は従業員の態度が悪くなると
地元の人に脅され、
春節の時期にはポケットや鞄に
赤い袋に入った「利是」を
いくつも用意しておいたものです。
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中身は大概20香港ドル紙幣で
当時でも250円位でたいしたことないのですが、
配る数が半端じゃないのでかなりの出費になります。
ただ香港では未婚者は
まだ一人前の社会人とみなされないので、
「利是」が貰える立場にあります。
30代後半で独身だった私も
年下の既婚者を含め
何人かの知人からお年玉をいただきました。
多謝晒!
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台北の知人のフェイスブックを覗くと
春節に入りコンビニ(便利店)までが
一斉に休みに入ってしまったことを
嘆く書き込みがあります。

不便には違いないでしょうが、
年々正月らしさが失われている日本から見ると
ハレとケというか
春節の特別感がとても羨ましく感じるのです。



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