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日下部正樹
1985年 TBS入社。
政治部、香港支局長、北京支局長、外信部デスクなどを務め、2010年9月までは、ソウル支局長。

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平壌のハマー

先月、取材でピョンヤン(平壌)を訪問しました。
北朝鮮訪問はこれで5回目ですが、
22年前に初めて訪れた時と同じくらい、
いやそれ以上に印象的な訪問でした。
jlBAqdPVwc.jpg
日本と北朝鮮は国交がないので
ピョンヤンに入るには
北朝鮮の大使館がある都市で
ビザを取らなくてはなりません。
日本から訪問する場合、
一般的なのは北京の北朝鮮大使館でビザをとり、
空路ピョンヤンを目指します。
lZXTIUwPkJ.jpg
これは高麗航空エコノミークラスで出された機内食。
食料不足が深刻だった90年代には
大きな段ボール箱の中に
コッペパンとりんごが
ひとつずつだけだった事を考えると
隔世の感があります。

北朝鮮での取材はなにかと神経を使います。
我々取材クルーには必ず案内兼監視役の
当局者が複数つき、
我々の発言・行動をチェックしています。
ホテルの外を勝手に出歩くことは制限され、
電話でのやり取りを盗聴することも
その気になれば簡単なのでしょう。
長時間緊張を強いられるせいか
取材を終え帰国すると
体調を崩すこともしばしばでした。
7qUC4HVRyp.jpg
今回も空港で携帯電話を取り上げられ、
(これは記者に限らず外国人全員が対象です。)
空港で政府当局者の出迎えを受け、
やれやれまた監視下での取材がはじまるなあと
覚悟を決めた矢先のことです。

空港からの移動や市内での取材には
当局が用意した車両を利用するのですが、
車窓からカメラを回す際も
同乗する当局者のチェックを受け
いちいち撮影していいかどうか
お伺いを立てるのが常でした。

ところがです。
今回は我々スタッフの数が多いこともあり、
当局者が座るスペースが無かったのです。
当然、無理にも乗り込んで来ると
思っていたのですが、
「それでは私は別の車に乗ってゆきます。」と
さっさと行ってしまうではありませんか!
車内には運転手を除けば
日本人だけが残されました。
こんな状況は初めてです。
我がスタッフは持てるカメラをフルに動員して
市内の様子を撮影したのでした。
4HUwmCzIeB.jpg
サプライズは続きます。

今回の訪朝にはダメ元で
ジョギングシューズを持参しました。
過去に私ひとりで
市内のデパートに出かけたところ
担当者が血相を変えてとんできて
「日朝両国のためになりません。」と
連れ戻された経験があるだけに
許可はされないだろうと思っていました。
ところが今回は
「いいですよ。ただカメラとか向けると
嫌がる市民もいるので気をつけてください。」
なんでしょう。この寛大さは!
早速、翌朝大同江沿いをジョギングしました。
ホテルから金日成広場までの往復8キロあまり
川沿いの遊歩道は平坦で気持ちよかった。
BIC8_UfdK5.jpg
ただiPodで音楽を聞きながら
ジョギングする人はまだいないのでしょう。
トップランナー並に注目されてしまいました。
最近、ピョンヤン市民が
ジョギングしていたという
目撃証言もあるのですが、
残念ながら今回市民ランナーを
目にすることはありませんでした。

よくピョンヤンは外国人に見せるための
ショーウインドウだとか
出身成分がいい特権階級しか住めない街だから
ピョンヤンだけ見ても
本当の北朝鮮はわからないといいます。
RMU5SqZ8ZL.jpg
私もこうした見方に基本的に賛成です。
ただ、こうした視点にたっても
ピョンヤンの変わり様には
驚されることばかりでした。

遊園地の絶叫マシーンで
 朝鮮人民軍の兵士達が悲鳴をあげていたり、
gTkF0FVPFo.jpg
流しのタクシーが増えていて
 市民が手を上げて拾うところを初めて見たり、

子供たちのランドセルの半分以上が
 ディズニーのキャラクターだったり、
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外国へ赴任する同僚の送別会だと言って
 川沿いで市民が肉焼いて飲んで歌っていたり、

中国との合弁デパートで市民が
 カート一杯に商品を買い込んでいて、
 しかもパンが飛ぶように売れていたり・・・
TdCWEKzD_T.jpg
金日成バッチをつけた人達について
我々がこれまで思い描いてきた姿と
今回彼らが見せた行動のギャップが激しくて
度々その場に立ち尽くしてしまった程です。
外国人の前で取り繕っていた市民が
素顔というか地を見せ始めた感じなんです。
それにいまのピョンヤン市民は
現金を持ち歩いているのですね。
それがなんだ当たり前じゃないか
と言われそうですが、
かつては公共サービスも食費も無料だから
現金は持ち歩かないと彼らは自慢していたのです。
それがいまはスーパーはもちろん、
食堂で地下鉄で屋台で彼らは現金を使っている。
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これは何なのか。

指導者が替わり
日本や韓国のメディアにも散見される
改革開放の動きの現れなのでしょうか。
それとも
タガが外れた状態になっているにもかかわらず、
市民からの反発を恐れて
当局も黙認せざるを得ない状況なのでしょうか。

いずれにせよ一度緩んだこの空気を
再び引き締めるのは相当困難だろうな。

などと考えながらホテルを出ようとすると
こんなものを見かけました。
bNESkOtKzK.jpg
ハマーH2。
日本でも8百万円以上する高級SUVです。
軍用車両を生みの親とする
まさに強いアメリカを象徴するような
この車をまさかピョンヤンで見かけるとは・・・
2S2mgXLnm4.jpg
誰が乗っているのかと覗きこむと
運転席には金日成バッチをつけた
開襟シャツのおじさんが・・・
私はまたしばし立ち尽くすのでした。



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  • 増田浩司さん
  • 2012/08/01 12:26
7月31日の参議院議員会館での、「日本人墓地」現況説明会に参加しました。戦後67年経過するというのに、いまだに戦後処理が終わっていないことを痛感しました。清津会の遺族の話を聞きますと、涙なしでは聞けません。

協力できることがあれば微力ながらやっていきたい。