プロフィール

プロフィール画像
日下部正樹
1985年 TBS入社。
政治部、香港支局長、北京支局長、外信部デスクなどを務め、2010年9月までは、ソウル支局長。

カレンダー

<<   2019年11月   >>
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

最近の記事

カテゴリ

月別アーカイブ

<<   2019年   >>

このブログで使用したタグ

ブックマーク


小さな中国

小さな中国と言っても
中国人がよく口にする日本人に対する侮蔑語
「小日本(シャオリーベン)」に
対抗しようと言うわけではありません。
先日、中国の地方に出張してきて
日本の25倍もの国土を持つ中国が
小さく感じられた事を書こうとしているのです。
P_B7oBcAiM.jpg
出張先は河南省南東部。
安徽省や湖北省に接した場所で
戦前・戦中と共産党の革命根拠地だったところです。
革命根拠地というと江西省の瑞金や
陝西省の延安などが浮かびますが、
共産党はこうした地域を拠点に
国民党や日本軍と戦ったのです。
と書くとなんだか格調高いのですが、
簡単に言えば国民党政権の支配が
およばないほどの田舎だったのですね。
出張先も最近まで中国の最貧地区と数えられたところです。
kmdAGb7zYr.jpg
出張を前に中国地図を見ながら気が重くなりました。
現地に着くまでに2日間はかかるだろう。
北京から中核都市までは飛行機で行けるとしても
その先は乗り心地最悪のローカル列車に揺られ、
さらにはおんぼろタクシーで
悪路をひたすら走らなくてはならない。

10年以上前に北京に駐在していた
私の感覚からすれば中国の大きさを
現実以上に思い知らされるであろう
出来れば避けたい出張でした。
_qTlv8bqQQ.jpg
ところが、いまや世界2位の経済大国。
中国はものすごい勢いで「小さく」なっていたのでした。
しばらく地方に行かなかった間に
高速鉄道と高速道路がまるで有機体のように
縦横無尽ににょきにょき伸びては
あの広い中国を結びついていたのでした。
飛行機とローカル列車を乗り継いで
10時間近くかかるだろうと思われた地方都市までが、
去年暮れに全線開通した京広高速鉄道のおかげで
乗り換えなしで5時間足らずで行けるようになりました。
さらに地方都市からその先、
一昔前なら車で5時間近くかかったであろう距離が、
真新しい高速道路によって2時間で結ばれていたのです。
10年前なら最低15時間かかった道のりが
7時間と半分以下に短縮されたのです。
iedO48oIcq.jpg
実際に行ってみた現地は、
素朴であたたかな人たちが住む穏やかな土地でした。
食事もおいしかったし、
ただ小学生がスクーターや
小型車を運転しているのにはびっくりしました。
zqTBPeT_4d.jpg
沿岸部の発展ぶりに目が行きがちですが、
内陸部も相当なスピードで開発が進んでいます。

特に高速鉄道沿線の開発ぶりは凄まじいほどです。
高速鉄道の駅をわざと市街地のはずれに作り
そこに巨大な新しい都市をいくつも作ろうとしているのです。
時速300キロの高速鉄道の車窓から見えるのは
急ピッチで造成されている土地と
まっすぐ伸びる8車線もあろうかと言う道路。
巨大な高層ビルの上には巨大なクレーン林立しています。
こんな光景が数百キロにわたって続くのです。
日本の公共事業がかわいく思えるほどの規模です。
BkFxlge4wo.jpg
そして建設現場から舞い上がる土ぼこりも
数百キロにわたって続きます。
中国の大気汚染については自動車の増加だとか
石炭の成分のせいだとか言われますが、
開発による土ぼこりも大きな原因ではないだろうか?
天気予報では晴れが続いているのに
太陽は土ぼこりの向こうに弱々しく見えるだけです。
AZLqsSlNOd.jpg
大気汚染の要因でもある黄砂は
もともと黄土高原の土が舞い上げられたものですが、
「日本により近い場所で、
 開発による新しい形の黄砂が発生している・・・。」
全くの私見ですが車窓に広がる開発現場と
土ぼこりに満ちた空を見ながらそんなことを考えていました。
zOMoF5xztF.jpg
さて時間的には大幅に短縮された中国の旅ですが、
快適な旅だったかというとこれはまた違う話ですね。
高速鉄道の座席は広いし、
最悪だったトイレの清潔度もそれなりに改善されています。
運行管理や安全面で信頼度となると
そうとう疑問が残りますが、
それでも昔の列車に比べれば月とスッポンです。
PWNgVkuxXM.jpg
ただね、乗客は相変わらずでしたね。
なんであそこまでリラックスしてしまうのでしょうね。
列車の中でもまるで我が家のように振舞っています。
後方では子どもがゲームを大音量で楽しんでいます。
横ではお婆さんが古い歌を口ずさんでいます。
結構上手いけど・・・
通路では立ち上がった母さんが
「どこにいるの?ご飯食べなさい!」と
子どもに向かって叫んでいます。
前のおじさんはリクライニングシートを思い切り
倒したまま携帯を手に大声で商談を続けています。
静かに本を読んでいる自分が
間違えてよその家に上がりこんでしまったような
落ち着かない気分になってしまいます。
cjHbntiffz.jpg
かつて中国では列車に乗ることも苦行なら
切符を手に入れる事は更なる試練でした。
地方の中核都市の駅構内では
一昔前を彷彿とさせるような光景が広がっていました。
afkm3oYkjh.jpg
あふれる人と怒号、様々な臭い。
すべての人は切符売り場の窓口しか見えていないので
列など気にしません。人々が入り乱れているので
いつ窓口にたどり着くのか検討もつきません。
(写真だとおとなしく並んでいるように
 見えるのはなぜでしょう?)
私の横で若い男性が「列車に間に合わない。」と
涙を流して訴えています。
列を譲ろうとすると別の人たちがどっと押し寄せてきました。

私が同行してくれた北京の知人に
「乱(ルアン)=乱れてるね。」と声をかけると
知人はちょっと悲しそうに
「大乱(タイ・ルアン)=大混乱だよ。」と答えたのでした。
なんだ、
中国人もそう思ってるんじゃないか・・・。



この記事へのコメント
印は入力必須項目です。
名前
コメント
画像認証 :

表示されている数字を半角で入力してください。
 
  • 松波大仁さん
  • 2013/03/31 19:06
戦後の復興期、高度経済成長期に日本が辿った歩みを考えると、今の中国に、同じことを超高速でするのはよくない、とたしなめる資格は我々にはないのでしょうか。
少なくとも公害などの被害の一部でも避けることができればと思うのは、先進国の思い上がりなのでしょうか?
それにしても地球上の食料は本当に大丈夫なんだろうか?