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日下部正樹
1985年 TBS入社。
政治部、香港支局長、北京支局長、外信部デスクなどを務め、2010年9月までは、ソウル支局長。

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アロハシャツと日本

人にはそれぞれこだわりがあって、
それが歳月を重ねるとそれなりの形になるものです。
私のように移り気で集中力の続かない人間でも
50歳にもなると人には負けないぞという
こだわりがいくつかあります。
他人はそう見てくれないかもしれませんが・・・。
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今回登場するK君は中学・高校時代の友人ですが、
彼のこだわりは私のものとは格というか次元が違います。
K君は自他共に認める
世界的なアロハシャツの収集家であり、研究者なのです。

アロハシャツと言うのはご存知のとおり
ハワイの風土や生活を色鮮やかに
デザインした開襟シャツのことで、
もともとは観光土産用に作られていましたが、
いまではハワイの正装とも言うべき存在です。

アロハシャツの中でも
コレクターの間で人気があるのが
1940年代から50年代に作られたものです。
この時代のシャツは土産物という枠を遥かに飛び越え
卓抜な発想による、まさに芸術品と呼べるもので、
素晴らしいクオリティーのシャツが
これでもかと言うほど生産されていました。
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ところでアロハシャツと日本の
深い関係をご存知でしょうか?
ハワイと日本の関係と言うと
すぐに真珠湾が頭に浮かぶと思います。
でも両者の関係はさらに時代を遡るのですね。

ハワイはアメリカで唯一「王宮」のある州です。
つまりアメリカに併合される以前は立派な王国でした。
そしてハワイ王国はアメリカからの
政治的経済的な侵略圧力をかわすために
対岸の新興国、日本との関係を重視します。
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1881年、ハワイ国王は来日し
明治天皇と会見しています。
ハワイ側から日本からの移民受け入れ、
日本とハワイの連邦化、
そして皇室とハワイ王室の結婚について
提案があったと言うから驚きです。
ハワイからの猛烈なプロポーズですが
アメリカを刺激することを懸念した日本側は
連邦化や政略結婚については
丁重にお断りしたということです。

それでも1893年、リリウオカラニ女王が
(「アロハ・オエ」の作曲家として知られています。)
反王室クーデターによって軟禁された際には
日本は軍艦2隻をホノルルに派遣して
アメリカ人主体のクーデター勢力を
威嚇していたのですね。知らなかった!
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こんな日本とハワイの関係が
アロハシャツを生んだとも言えるのです。
K君によると写真のシャツが、
1936年に商品登録された
アロハシャツ第一号で
スミソニアン博物館にも保管されているそうです。
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一目見てわかるように和柄です。
当時の日系人社会では日本から持参した
着物や浴衣をシャツに仕立て直して
着用することが多かったそうです。
20世紀初頭にはハワイの人口の4割が
日系人だったと言うことですから、
和柄はハワイ社会に浸透して行ったのでしょうね。
中には仕立屋として和柄のシャツを
売り出す日系人もいました。
アロハシャツ第一号も販売したのは華僑の店でしたが、
仕立てたのは「ムサシヤ」という日系の店でした。
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考えてみると
着物の大胆で自由な構図や鮮やかな彩りは
アロハシャツに通じるものがありますよね。

アロハが最も輝いていた時代、
終戦から50年代を通じて
日本から大量の生地が輸出されました。
友禅をはじめ染め織物の産地だった
京都や大阪が中心だったそうです。

しかも日本から輸出されたのは
和柄だけではありません。
典型的なトロピカル模様の生地も
日本でデザインされたと言うのです。
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ビンテージアロハを多少かじったことのある方なら
誰でも知っているこのデザイン。
K君によればこの生地も
京都でデザインされ輸出されたものだそうです。

それにしても50年代や60年代の
アロハシャツはある極みに達した感があります。
K君のコレクションのほんの一部を紹介すると・・・。 

写真はサンフランシスコ-ホノルル間に
就航していた客船のレストランのメニューの柄を
仕立てた傑作アロハのひとつ。
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鯛もアロハのデザインになってしまう!
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これも有名なゴーギャンの版画をデザインしたもの。
芸術性高し!
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極めつけは「百虎」と呼ばれるこのシャツ。
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ここまで来ると凄まじいデザインですよね。
ちょっとこれを着て表は歩けないな・・・。
この「百虎」オリジナルで程度が良ければ、
大衆的な外国車が買えるような
値段で取引されているそうです。
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K君のオフィスで
お宝アロハシャツの数々をながめていると
ふたりの表情が自然と緩んできます。
一方でお互いに50歳を過ぎて
シャツのデザインに負けてしまうと言うか
「芸術品を纏う」機会が
ますます失われていることは確かです。
「でも、いいアロハは
 見ているだけで楽しいよね。」
とおじさんふたりは頷くのでした。



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