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日下部正樹
1985年 TBS入社。
政治部、香港支局長、北京支局長、外信部デスクなどを務め、2010年9月までは、ソウル支局長。

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狗を打つ

久しぶりに北京に行ってきました。
好物の辣子鶏を堪能してきました。
夏の暑さとビール、そして辣子鶏!
最高の組み合わせですね。
(写真撮るのを忘れてしまいました。)
さて、だいぶ間が空いてしまいましたが、
前回からの続きです。
日本人は北京を何故「ペキン」と
呼ぶのでしょうか?
hAWbWJAz3g.jpg
日本の場合、中国の地名は
音読みもしくは現地読みが基本ですから
北京は「ホクキョウ」か
「ベイジン」になるはずです。
ちなみに英語は現地読みをとって
「ベイジン」と呼んでいます。
では「ペキン」とはどこから来たのでしょう?
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「北京の55日」という古いアメリカ映画がありますが、
この原題が「55days at Peking」なのですね。
つまり日本だけでなく
かつては英語でも「ペキン」と言っていたわけです。

答えを先に言ってしまうと
「ペキン」は広東語の発音から転じたものです。
794n1FGMWr.jpg
広東語は中国の一方言と言うには
余りにも大きくかつ独特な存在です。
文法こそ北京語に似ていますが
発音は日本語と韓国語ほど違います。
使用人口は5千万人を超え
衣食住の面で広東語文化圏を形成しています。

北京を広東語では「パッキン」と発音します。
広東は昔から中国の対外的な窓口で
欧米人が初めて耳にした
中国の都の名前は「パッキン」だったはずです。
PtqWqM1F3X.jpg
私も取材したことがありますが、
イギリス領香港最後の総督パッテン氏は
いつも「ペキン」と呼んでいました。
wHmP_zAynF.jpg
香港=ホンコンも
広東語=ヒョンコンからきた英語なまりです。
北京語だと香港=シャンカンで全く違います。

廈門がなぜ「アモイ」なのか?
90年代初めに中国取材に関わり始めた頃
私にとって最大の謎でした。
大げさに聞こえるかもしれませんが
まわりの中国人に聞いても
納得できる答えがなかなか得られなかったのです。
いまならネットで検索すればいくつか
情報を得られますが、当時はそうはいかなかったのです。
Bwy0tUgLAX.jpg
廈門とは福建省の主要都市で
戦前戦中には日本領事館の置かれた場所ですが
日本人は北京語の「シャーメン」でも
音読みの「カモン」でもなく
「アモイ」と呼びます。
どうやら現地語である閩南語から転じたようですが、
廈門周辺は古くから
海上貿易の中心であったことから
アモイという呼び方が
中国国内以上に世界で知られたようです。
いまの中国人にいくら「アモイはどこだ?}と
聞いても通じないでしょうね。

こうしてみると中国の地方言語と
異文化が出会ったとき
本来中国では方言に過ぎない呼び方が
世界的な呼称になってしまうようです。
中国の広さが伺えます。

異文化とは主に欧米な訳ですが
中には日本がかかわりを持つものもあります。
YFx3exVL0p.jpg
台湾第二の都市「高雄」。
先住民である高砂の人たちが
「ターカウ」と読んでいた土地に
後から来た漢人が「打狗(ダーカウ)」という
漢字をあてました。
さらに台湾を植民地とした日本は
「打狗=犬を打つ」というのは
地名としては印象が悪いと考え
いかにも日本的な「高雄」という漢字をあてました。
日本が去ってからも漢字は
そのまま残りましたが、
読みは北京語で言うと「カオシュン」です。
HkElx8w7IO.jpg
高雄とおなじ台湾南部に
民雄(ミンシュン)という街がありますが、
これも先住民の「ターミャオ」に
漢人が「打猫」の漢字をあて
日本人が「民雄(タミオ)」に改称したのです。
それにしても
打狗といい打猫といい
当時の漢人には動物愛護の精神が
著しく欠けていたのですかね・・・。

中国の地名を見ていると
色々と引っかかるところがありますよね。
ハルビンは何故カタカナで表記するのだ!
などなど・・・。いずれ触れたいと思います。



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  • 小林正和さん
  • 2014/11/17 20:34
では、ジャパンという英語は、
中国語の「リーベン」からとられて
いるのでしょうか。このときのリーは、
ちょっと濁った、濁音のリーですし。

ハングルの「イルボン」も
「ニッポン」も、似た音なので、
元はと言えば、中国語の方言のような
ものなのか、20年前からずっと
気になっていました。