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「ネットTVの衝撃」 ―志村一隆

視聴行動データをIT企業に吸い取られているテレビ局

前川さんのポストNHKはなくても良いと民放は言えるか」に、「広告主、広告業界、テレビ・ラジオ業界がネット時代のマーケティングを共同」でおこない・・・と書いてある。思わず「そうですよ!」と膝を打った。
ただ、前川さんは、日本の放送市場のなかで、「NHKと民放が共存共栄を図る」という立ち位置であるが、「ネット時代は、放送もネットも国内も海外も関係ない。シームレスだ」というのが私の考えだ。
ネット時代の「映像ビジネス」は、放送市場、テレビビジネスといった言葉では捉えきれないほどの変化を遂げる。

地デジ後の映像ビジネスのデジタル化

地デジ化は、「放送」のデジタル化であって、映像ビジネス全体のデジタル化ではない。地デジになっても、番組の間に広告は挟まるし、毎日夜7時にニュースが始まる。テレビ局にとって、ビジネスモデルを変化させなければならない真のデジタル化はその後にやってくる。
2010年10月にアメリカでグーグルTVが発売された。リモコンに90個ボタンがあり、スイッチオンするとメニュー画面が現れる。見たい番組を選ぶと、アマゾンが運営する映像配信サイトにつながる。ほかにも、アメリカで流れている韓国家電メーカー、サムソン製テレビのCMは、フェイスブックやツイッターで遊んでいるシーンがメインだ。画質や3Dをアピールするシーンは全くなく、テレビ1台買うとブルーレイプレイヤーがオマケについてくる。
サムソンやグーグルTVのように、映画やチャットができるテレビでは、必然的にテレビ番組を見る機会が減る。
ユーザーが自分の好きな番組をいつでも好きなときに見られる仕組み(オンデマンド)を知ってしまうと、テレビ局は、放送のように一方的に番組を流すだけでなく、インターネット配信を増やさざるを得ないだろう。

インターネット配信はチャンス

居間のテレビの主役がテレビ番組でなくても、テレビ局のインターネット配信が増えれば、テレビ局は、映像ビジネスの主役でいられるだろう。
なぜなら、インターネット配信をすれば、ユーザーが自分の視聴行動を逐一テレビ局に教えてくれるからだ。番組を何人が見たのか?その番組を見た人はほかに何を見るのか?いつショッピングサイトに行ったのか?こうした視聴行動は、インターネット広告の仕組みをそのまま応用できる。
放送の仕組みでは、テレビ局は広告枠を売るだけだったが、ネットTV時代には、商品を販売して、その消費行動データを集められる。
グーグルやアマゾン、ヤフーや楽天は、自社に消費者の行動データをたくさん蓄積している。そのデータと分析が、各社の武器だ。インターネット登場以降で成長した企業は、行動データを集積している。
ところが、インターネットの映像ビジネスで、楽天やグーグルのように膨大なユーザー行動データを持っている企業はまだない。
映像コンテンツを生み出せるテレビ局はそのデータを蓄積、分析できるいちばん近い位置にいる。

アドテクノロジーと結びついた次世代テレビ局

その後の展開は、インターネット広告のアドテクノロジーの発展を参考にしたらよい。
インターネットビジネスの多くは、まず、アナログ時代の手法をインターネットに置き換えることから始まる。たとえば、ヤフーのポータル広告は、ただ広告枠が新聞やテレビからヤフーになっただけで、クリエイティブを制作し広告枠を買う行為はどちらも変わらない。
2009年秋頃から、急に盛り上がってきたアドテクノロジーは、株式売買モデルの開発者とか数学の専門家とか、広告業界の部外者たちばかりで、従来は勘に頼ってきたクリエイティブ、メディアプランの価値を、ユーザーの視聴数やクリック数で判断しようと試みている。
たとえば、1秒間に何百通りのバナー広告を制作、一斉配信して、クリック率のよいクリエイティブだけを残していく仕組みは、クリエイティブの良し悪しはデザイナーのセンスではなく、ユーザーの反応数で決まる。
出稿する広告枠も、アドエクスチェンジという広告枠と広告クライアントをマッチングする仕組みがあって、自動で行われる。
このアドテクノロジーと視聴行動データを集めるテレビ局が結びつけば、広告ターゲットに直接、低コストで配信する広告ビジネスが可能だ。最先端の広告ビジネスは、もう広告枠を売買するビジネスではない。
ネットTV時代には、ユーザーは好きな番組に直接アクセスする。その結果、映像ビジネスは、無数のコンテンツを低コストでネットワーク、取引するモデルになるだろう。
テレビ局がこのビジネスモデルに脱皮するのかどうか、自分たち自身で決めればよい。



志村一隆(シムラカズタカ)プロフィール
1991年早稲田大学卒業、第1期生としてWOWOWに入社。2001年モバイルコミュニティを広告ビジネスで運営するケータイWOWOWを設立、代表取締役就任、業界の先駆けとなる。2007年より情報通信総合研究所で、メディア、インターネットの海外動向の研究に従事。2000年エモリー大学でMBA、2005年高知工科大学で博士号
『明日のテレビ-チャンネルが消える日-(朝日新書)』、『ネットテレビの衝撃(東洋経済新報社)』が絶賛発売中。ツイッターは zutaka



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