「…祖国そのほか」“せんぱい日記”③ ― 前川英樹

12月6日(月)
今週我が家は内装工事。
この家を建てた大手建築業者の子会社のリホーム業者、そこから発注された関連の施工業者、そして業務ごとに請け負っている現場業者、という構造で作業が進む。多分、テレビの制作構造より近代化されているだろう。
「客」であるこちらからはコストの分配の仕組みは見えないが、寅さん風にいえば<労働者諸君>は、合理的な範囲(適宜キチンと休憩する、など)で丁寧にまじめに働いていた。
畳みの作業で、リホーム業者の営業さんと会話。「和室仕様の部分は外国人労働者には無理だね、尺貫法だもんね。テレビの現場の世界もそうなんだよ。これからどうなるんだろうね」など。

12月7日(火)
戸隠スキー場から、シーズン券到着。
年内に滑れるだろうか。
「草莽無頼なり」(福田善之)読み始める。
ウィキリークス問題(騒動?)。これについては「あやプロ」別記事参照。

12月8日(水)
真珠湾攻撃の日。
日中戦争から太平洋戦争への転換と竹内好再考。
そして、ジョン・レノンが死んだ日。
・・・想像してごらん 国境なんてないんだと・・・
「国」とは何か?

「マッチ擦るつかのまの海霧ふかし 身捨つるほどの祖国はありや」
                                   寺山修司 

「朝焼けの空にゴッホの雲浮けり 捨てなばすがしからん祖国そのほか」
                                     佐々木幸綱 

「身捨つる程の祖国はありや」という問いから「捨てなばすがしからん祖国」への転位がこの半世紀の過程なのか。そして、いまその先の何処へ行こうとしているのか、それともそのどこかへの回帰しようとしているのか、それが私たちの選択だ。尖閣映像もウィキリークスも、そこから遠くない。
それにしても「祖国そのほか」の「そのほか」が良い。

12月10日(金)
内装工事終了。
氏家さんの「あやブロ」を見る。「リア充」か…。ぼくは知らなかった。ぼくが知らないことと、テレビの現場の人間が知らないこととは意味が違う。テレビは、というよりどのメディアであれ、現象に敏感であること、そして現象の意味を問うこと、それがメディアで仕事をする理由である。テレビの現場が「リア充」を知らなかったとすれば、問題は流行り言葉への乗り遅れではない。大事なことは、「リア充」的なるものへの想像力なのである。
私たちは、世界を知るための想像力を持っているか?

12月11日(土)
朝日新聞 「耕論」で情報リークについて識者が論じている。




TBSメディア総合研究所“せんぱい” 前川英樹



前川英樹(マエカワ ヒデキ)プロフィール
1964年TBS入社 <アラコキ(古希)>です。TBS人生の前半はドラマなど番組制作。42歳のある日突然メディア企画開発部門に異動。ハイビジョン・BS・地デジというポストアナログ地上波の「王道」(当時はいばらの道?)を歩く。キーワードは”蹴手繰り(ケダグリ)でも出足払いでもいいからNHKに勝とう!”。誰もやってないことが色々出来て面白かった。でも、気がつけばテレビはネットの大波の中でバタバタ。さて、どうしますかね。当面の目標、シーズンに30日スキーを滑ること。



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