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「波乱のシンポジウム」 ― 氏家夏彦

つい先日(3月8日)、「ソーシャルメディア時代の放送」という放送批評懇談会のシンポジウムが開かれ参加してきました。非常に刺激と緊張にあふれ、わくわくドキドキの展開でしたので、当日の様子をレポートします。
(詳しい評価は前川せんぱいにお任せし、私はその場の雰囲気を中心にお伝えします)

まず角川グループHD会長・角川歴彦さんの基調講演。
続いて博報堂DYメディアパートナーズ取締役・小林昭夫さんの当別講演、
次はディスカッション。テーマは「ITは放送ビジネスをどう変えるのか」、パネラーは日本テレビ・倉澤治雄さん、電通総研・奥律哉さん、日経ビジネスオンライン・柳瀬博一さん、モデレータは法政大学教授・藤田真文さん。

そして最後に、私にとっての本日の目玉、「ソーシャルメディアとジャーナリズム」というセッションが行われた。TBS「報道特集」・金平茂紀キャスターと、ニコニコ動画を運営する株式会社ニワンゴ・杉本誠司社長、ジャーナリスト・津田大介さん、モデレータは専修大学准教授・山田健太さんという顔ぶれ。
実は前川せんぱいが主催者である放送批評懇談会のメンバーなので、金平さんがチュニジア取材から帰ってくるのが間に合わないかもしれないという情報を聞いていた。もし間に合わなかったら現地からスカイプで中継するか、技術担当を誰にお願いするか、などなど直前まで慌ただしかった裏事情を知っているので、無事セッションが開けたことにまずホットした。

セッション開始。最初は津田さん。
・・・内容は放送批評懇談会事務局がまとめるそうなので、大雑把に書くと・・・

ジャスミン革命などと言われる最近の「ソーシャル革命」では、権力に対し圧力となったのはあくまで民衆がリアルに集まったデモであること、一部でもてはやされているようにソーシャルメディアの威力が全てだ!などというのは言いすぎだが、「革命の背中を押してくれた」、「きっかけになった」というのは事実。動員の革命だ。

さらに津田さんは、ジャーナリズムに対しソーシャルメディアが果たせる役割を分析した上で、ネットユーザーが『既存メディア』のどこに不満をもっているか、を論じる。このシンポジウムの参加者は、津田さんが言う『既存メディア』に属する(広告代理店も含め)人たちが大半で、『既存メディア』という言葉が発せられるたびに“挑発”されているような気分になるのか、対立関係を意識してしまうのか、会場の空気が冷えるのがわかる。

しかしその後で津田さんは、
既存メディアとソーシャルメディアは融合する!
実はテレビは強い!
実はネットとマスコミはとっくに融合している!対立してる場合じゃない!
と会場の既存メディア系参加者の心をくすぐり、さらに建設的な方向へ結論をもっていくあたりはさすがだと感じた。

次はニワンゴの杉本さん

ニコニコ動画というプラットホーム上に、多くのユーザーによる多くのメディアが誕生した。発信力のあるユーザーの発言がマスメディア化する。

状況が変わり始めたのは去年後半、小沢一郎さんのニコニコ生放送出演から。それまでマスメディアはニコニコ動画などを扱う際、「動画共有サイト」と一括りにしていた。しかし小沢さん出演からは、ちゃんと「ニコニコ動画」とか「Youtube」とか言ってくれるようになった。またそれまでは既存メディア側に話をしようとしても黙殺されていたのが、とりあえず議論はしてくれるようになった。

今後は融合の可能性をもっと追求すべき。事業としての収益性をどう担保するかは大事だが、ビジネス規模が違う。例えばテレビのビジネス規模と動画サイトの規模は違いすぎる。テレビが失った広告収入を動画で取り戻そうとしても無理な話。そこを切り分けないといけない。

そして金平キャスターだが、直前に帰国したせいか疲れているが、チュニジアの現場から直行したせいか気分は高揚している感じがした。私はここまではメモをしながら聞いていたのだが、この先は面白すぎてメモをとっていない。ニコニコ生放送(ニコ生)のタイムシフト視聴を元に書きました。

まず冒頭、金平さんは、「私は既存メディアの中でも化石みたいなもので」と断りをいれてから、「津田さんが言ってたソーシャルメディアの特性だとかメリットは、既存メディアで十分できること」「融合とかそんな関係じゃなく、テレビや新聞自体がソーシャルメディアだ」とかます。当然ニコ生では強烈な反発コメントが画面を流れる。

次に金平さんが24時間前にいたチュニジアでのレポート動画が流される。その後からちょっと風向きが変わり始める。
「チュニジアではインターネットにつないでもみんなタダ。水や空気と同じと考えられている。それ程ネットは重要」とネットを評価した上で、「今のテレビで盛んに取り上げられる「小向事件」「京大カンニング事件」はそんなに大きく扱うべきなのか」と、矛先は「既存メディア」側に向けられる。
そして遂に出た発言「僕ら既存メディアは、ソーシャル=社会性という概念を喪失しているんじゃないか」「何を誰に対して発言しているのかが、内向き、内向してしまっている」「伝える内容が視聴者の俗情におもねる方向に向かっているのは、伝える方にも伝えられる方にも双方にとって不幸だ」

そこでモデレータの山田先生がニコ生アンケート(ニコ生を視聴中の人たちに生で質問をぶつける、生アンケート調査)を仕掛ける。質問は「テレビ局は生き残れるか」、結果は数分で出て、Yesが4割。ちなみにこの時点で視聴中のユーザーは2万人をはるかに超えていた。

これに対し金平さんは「非常に反応が2チャンネル的ですよね。…と言うとまた“つぶれろ”とか言われるんですよね。僕はこういうものが民の声とは思いたくない。」とニコ生ユーザーを刺激する。で、また字幕は反発で埋まる。

ところが金平さんの続きの発言でまた方向が変わる。
金平さんが「ジャーナリズムの危機を問題にしたい」「ビジネスとして生き残るよりも、ニュースとかジャーナリズムとか報道とかが劣化している、その事を放っておいてはいけない。ソーシャルメディアのポジティブな面は既存メディアでもやろうと思えばできる」と発言。
これに対し津田さんが「金平さんの話聞いていて最初ケンカ売られたと思ったんですが、聞けば聞くほど僕が話したのとおんなじだ」と返す。

金平さん「貧すれば鈍するって言うけど、貧すれば(大切なのは)中味じゃなくなっちゃう時がある。ダメになってくると数字ばっかり見るようになる、視聴率とか。本来自分たちがやるべき初心とか…青臭い事言いますけど、そういうものがどんどん失われていく。そういうのを皆(視聴者・ユーザー)は見ている、何やってるんだよ!みたいな」…とマスメディア側の自己批判というより、今のマスメディアに感じている危機意識からか話が熱を帯び、このあたりから字幕の雰囲気がガラっと変わって、プラス評価が増えてくる。

津田さん「金平さんの話を聞いていると、マスメディアを持ちあげてソーシャルメディアを否定しているように見えて、ずーっとソーシャルメディアの可能性を語っているようにしか聞こえない。高度な芸だなぁ」「金平さんが青臭い話と言ったのに引っかかってて…、今のマスメディアでは青臭い事はできなというのが一つの結論。青臭い意識をもってジャーナリズムをできるのがソーシャルメディア」

セッションも終わりに近づき、再びニコ生アンケートへ。
「金平さんがニコ生で特番を作ったら見たいか?ってどうです?」
金平さん「だーめですよそれw。晒される方に発言権ないんですから。それは怖い事なんですよw」
津田さん「金平さんには、ネットをもうちょっとまっすぐな目線で見てもらいたいだけですねw」
で、最後に結局、
「金平さんにニコ生特番してもらったら見るか?」のニコ生アンケートを実施したら、はい!が85%と、圧倒的な支持を得てしまった。この時点でニコ生視聴者数は3万人を突破していた。平日のこの時間(午後6時前後)でこの視聴者数は非常に多いとのこと。
「凄いですよ、金平さん大人気ですよ」
「やっぱり金平さんのジャーナリズムは支持されていて、それをどこで発揮するのがいいのか、ということですね」


終了後の打ち上げで杉本さんに、金平さんへの評価が何故あんなに急に良くなったのかを訪ねてみると、杉本さんは「金平さんはツンデレだからですよ。ツンデレはネットでは凄く受けますから」と分析してくれた。成程、言われてみれば金平さん、確かにツンデレだ。最後の方では字幕も「この人、ツンデレなんだ」とか、「金平さんって、こっち側の人間じゃん」のようなものも散見された。

実はこのセッション、「ソーシャル」の定義が明らかに大きく食い違ったまま最後までいってしまったのだが、それすらも細かい事と思えてしまうほど面白く、刺激に満ち、お茶目なシンポジウムであった。もちろんリアルな会場で見るのが一番だが、ニコ生で字幕を見ながらというのも別の面白さがある。ソーシャルメディアはやはりメディア・コンテンツに新たな要素を加えたと確信した。

日曜日に津田さんから今回のセッションの感想を伺う事になっているので、インタビュー記事にまとめたら週明けにもUPします。
杉本さんにも書いてもらう予定です。
金平さんにもお願いしてみます。

このセッションはニコ生でタイムシフト視聴もできます。
http://live.nicovideo.jp/watch/lv42255398
(外部リンクできないので、コピペでお願いします)
津田さん、杉本さん、金平さんの記事を読む前に、視聴される事をお勧めします。

このような素晴らしいシンポジウムを実現していただいた放送批評懇談会の皆様に感謝します。

氏家夏彦プロフィール
1979年TBS入社。報道・バラエティ・情報・管理部門を経て、放送外事業(インターネット・モバイル、VOD、CS放送、国内・海外コンテンツ販売、商品化・通販、DVD制作販売、アニメ制作、映画製作)を担当した後、2010年TBSメディア総合研究所社長。月に200km走るのが目標です。週末は海に出てます。はっきり言ってゲーム・アニメは大好きです。ツイッターとフェイスブックはぼちぼちやってます。



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