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「複眼報道の時代」 ― 志村一隆

CNNとNHK、TBSのネット配信

地震が起きたとき、私はニューヨークに居た。向こうの深夜1時半頃、時差ボケのままツイッターをぼんやり見ていたら、とあるアメリカ人が「日本で地震?CNNをみなくちゃ」とつぶやいている。
早速、テレビをつけると、津波に逃げるトラックが飲み込まれ、海に現れた巨大な渦巻きに1艘の船が引きずり込まれている。
それから朝まで、ツイッターとCNN、NHKの海外放送を見続けた。
東京では、電車の運行情報が錯綜しているみたいで、「渋谷から東急は動いてない」、「有楽町線はガラガラ」といった情報をリツイートし続けてみた。CNNは、ハワイ、西海岸への津波到達予想を出している。
そのうち、東京から「家に着いて、テレビを見て、地震の凄さに気付いた」というつぶやきが入った。職場にいた彼らは、家に辿りつくまで、ニューヨークで私が見ていた津波の映像は見ていなかったのだ。
CNNは、当初「iReporter」という視聴者提供の地震ビデオを流し、スカイプで吉祥寺在住のアメリカ人と話したり、テレビ電話インタビューを放送していた。そのうちに、東京支局のキャスターがレポートをするようになった。映像もNHK提供のものからテレビ朝日に代わった。
「人口1300万人の東京も地震に襲われた」という言葉と、「地震に慣れている日本人でも、今回は想像以上だ」というフレーズを何回も聞いた。
ニューヨークは、次の日はまだ金曜だ。カフェに行ってみたが、それらしき話題をしている人には出会わない。ベストバイのグーグルテレビや、発売したばかりのiPad2で検索すると、「Earthquake」の画像、映像が飛び込んでくる。昼過ぎから、英語でもEarthquakeのつぶやきがタイムラインを埋める。ジョークをつぶやき不謹慎として仕事をクビになる俳優もいた。「あまりのひどさに言葉もない」というアメリカ人のつぶやきもみた。
夕方のABCやCBSでも地震が大々的に報じられた。CNNも相変わらず中継している。そのうち、NHKがユーストリーム、ニコニコ動画で、TBSがユーチューブでライブストリーミングを始めた。
CNNは東京支局のキャスターが仙台に入り、現地レポートを始め、ニューオーリンズのハリケーン被害のときに、陣頭指揮を執った軍人などがコメントしている。日本のテレビ局も、現地からのレポートが増えた。
福島の原発で最初の水素爆発が起きてから、CNNは地震報道から原発報道にシフトし始めた。専門家が、「いまの時点で、福島はチェルノブイリ、スリーマイルに次ぐ3番目に悪い原発の事故だ」というコメントを何回も流していた。
NHKとTBSは、被災地の映像を流し続ける。現地の様子はよくわかった。ニューヨークからCNNとNHK、TBSの映像を見ていながら、いま必要なのは原発の解説ではなかろうかと思い続けていた。
そもそも、自分は日本に帰れるのだろうか?日本行きの飛行機はキャンセルされたり、成田ではなく横田基地に着陸している。成田が機能しているかの情報はテレビからは得られなかった。
それでも、やっと飛行機が出るというので、土曜午後JFK空港に向かった。タクシーの運転手が、「あれだけの地震で、あれしか死者が出ないのは奇跡だ。これから数字は増えるだろうけど」と言われる。「ソニー、パナソニック、サムスン、日本はテクノロジーを全部持ってるんだから、これからも大丈夫」とも言われた。
日曜深夜に帰国してからは、もうCNNは見ていない。日本のテレビ各局も原発に時間を割く時間が増えている。

テレビ局のネット中継とネットメディア

原発報道は、日が経つにつれ原発の解説図がより詳しくなった。注水パイプの位置、サプレッションプールが炉心を取り巻いていたりなど。当初の図では、なぜ圧力炉から建屋に水素が漏れるのか?などがわからない。図では線が引いてあるのに、なぜ漏れるのか?それについて解説できる人はいなかった。見ていて「えっ?」と疑問に思ったことを、質問してくれるアナウンサーもいた。
また、面白かったは、iPhoneなどから記者会見をそのままネット中継するフリーランスの人がいたことだ。テレビメディアの記者会見中継は、これからというところで、CMやスタジオに戻ってしまうことを多かった。しかし、ネット中継では、質問する人の顔も映し出され、また途中で終わることもない。また、彼らは配布される資料もPDF化して公開した。

権力との対峙には、プロアクティブな知見が必要なのでは

記者会見で質問する記者たちの態度の大きさは、それを見た視聴者にどう映ったのか。それはいいとしても、質問内容が、言動の挙げ足とりに終始していた。たとえば、「説明のトーンが変わったが、これは重大なことが起きていると見ていいのか?」とか「●●という報道がされていますが、それについてのお考えを」など。
取材される側の一字一句を追い、整合性が合わない部分をニュース的価値と思っているのだろうか。
重要なのは、記者会見での発表の方法、言葉、表情ではなく、原発の行方、全体像ではいのか。その予測、分析に価値があり、その知見こそが権力との対峙に必要なものだろう。今回の報道で、マスメディア側の受け身な体質が深く感じられた。
ネットメディアで一次資料もオープンにされる。記者会見での公式発表を受け、あとは各自が記事にトーンをつけるという既存のメディア報道の手法から生まれるニュースは、支持を得るのだろうか。それとも、それが権力に対峙する報道の役割なのか。
この1週間、ニューヨークと東京、テレビ局、テレビ局のネット配信、海外メディア、ネットメディアと地震と原発ニュースを複眼で経験した。また、複眼できる環境にあることがたくさんの人に知れ渡った。情報のセカンドオピニオンが広まる時代では、ジャーナリズムはより緊張感が必要だろう。

さいごに、今回痛感したのは、日本人による英語の日本報道が必要だってこと。





志村一隆(シムラカズタカ)プロフィール
1991年早稲田大学卒業、第1期生としてWOWOWに入社。2001年モバイルコミュニティを広告ビジネスで運営するケータイWOWOWを設立、代表取締役就任、業界の先駆けとなる。2007年より情報通信総合研究所で、メディア、インターネットの海外動向の研究に従事。2000年エモリー大学で MBA、2005年高知工科大学で博士号
『明日のテレビ-チャンネルが消える日-(朝日新書)』、『ネットテレビの衝撃(東洋経済新報社)』が絶賛発売中。ツイッターは zutaka



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