今回よりあやとりブログに参加させていただく、カフェグローブ・ドット・コムの矢野貴久子です。メディア識者のみなさまの仲間に入れていただけることとても光栄で、一生懸命書かせていただこうと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。
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東日本大震災から1ヶ月が過ぎ、今回ほど私たちが情報の取捨選択を考えさせられたことはなかったとつくづく思っている。
安否確認やマスメディアが入らない現地での情報はネットが威力を発揮した。震災後の被災地でよく聞かれた言葉は「正確な情報がほしい」という切なるものだった。
テレビで報道された解説に、これもまたtwitterやfacebookでこれは正しい、これは正しくないという情報がとびかった。
福島第一原発の問題は、情報元からして一元化されておらず、政府、東京電力、原子力保安委員会とバラバラに会見を開いている。
日本から発せられる情報と、海外での情報のギャップも激しい。
海外の友人が多い人たちは、その友人たちからの「早く日本を脱出せよ」「なぜ逃げない」「何ならこっちへ来い」という、メールの洪水に対応し説明しているだけでヘトヘトになったという話は本当によく聞いた。まるで「愛の脅迫」とたとえた人もいる。
私たちはまさにいま「情報難民」なのかもしれない。正しい情報が一元化されてすっと私たちのもとに届き、世界で共有でき、それをもとにひとりひとりが最善の行動がとれるというのは夢物語なのか。
もちろん、どんなに情報を一元化したとしても、政治的思惑などでそれがさまざまに拡散していくことは止められないとは思うが、せめて、すばやく正しい情報を得るための第一歩として何が必要なのだろうか。
こういう有事には、この有事の状況に特化した首相の下に企業でいうところのCIO(Chief Information Officer/最高情報責任者)という人が必要なのではないだろうか、と思ったりする。
CIOの仕事は、情報システムの構築や運営だけではない。得られた情報をもとに、トップに適切な報告や助言を行うことも必要になる。
だから、CIOの下にはその状況に応じて、情報の取捨選択を行える人をつける必要も出てくる。今回の場合なら、たとえば原発やその周辺に詳しい専門家だ。
情報システムの構築という意味では、被災地にいちはやくバッテリーとPCを配布し、googleの「パーソンファインダー」や2ちゃんねるの議論からたち上がった「共同編集 被害リアルマップ」などが連携しているようにする。
被災地の状況もネットを通じて逐次一元化できれば、支援物資などが重複しないですむ。そして、その情報をもとに、マスメディアもある程度取材地域などの分担ができるのではないか。
今後、これほどの広範囲かつ深刻な災害・人災が起こらないことを祈りたいが、想定外ということが現実に起こりえることを私たちは目の当たりにした。
そしてその中で、もっとも大事なものが情報である。政府の中に情報責任者がいて然るべき、そんなふうに思えて仕方ない。
矢野貴久子(やの きくこ)プロフィール
14年の雑誌編集経験をへて1999年12月に株式会社カフェグローブ・ドット・コムを設立。働く女性のためのメディアサイトcafeglobe.com、ショッピングサイトSELECT Caféを運営。2004年よりデジタルハリウッド大学院客員教授。