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1票の行使より現実感のある共同体への参加 ― 志村一隆

ラスベガスのローカルニュース、震災関連のニュースは2件あった

地震が起きたとき、私はニューヨークに居たが、先週はラスベガスにいた。そこで見聞きしたメディア体験を「記録」してみたい。
4月のラスベガスは、気温25度、湿度10%。汗もかかないし、髪はサラサラで、プールサイドは水着姿で本を読む人で溢れている。
ラスベガス滞在中、毎晩11時からKLASというCBS系列局のニュース番組を見た。5回見たうち、日本のニュースが流れたのは2件。双方とも1分程度。

1.中国が日本産海産物の輸入規制。CCTVの映像つき。フロリダでは魚にメキシコ湾産といったタグをつけ始めた。
2.インディアナ州ラファイエットにあるスバルの工場が、震災で部品供給不足、操業停止。

ローカルメディアで、日本の危険性のニュースが微量だが少しずつ報じられる。その影響なのか、カフェで、「あんな海外沿いに住むのは危険すぎるよ」と話しかけられた。5泊したラスベガス滞在中、日本への同情話は1度も聞かなかった。
街を歩くと、「チャイニーズ」と話しかけられ、大量の中国人観光客がカジノで盛り上がる。オシャレな寿司屋のシェフは、「お客さん?全然減ってないよ。ずっと前から景気は悪いけど」と言う。現地在住の日本人旅行会社の人によれば、「日本からの予約が半分くらいに減った」らしい。希釈される日本の存在。これも現実空間なのだろう。

節税サービスのテレビ広告と高校生のデモ

他のニュースで印象に残ったもの。

1.州の教育予算がカットされ、スクールバスの台数が削減、ドライバーが失業する。
2.音楽授業も削減、音楽教師が失業する。それに対し、高校生が抗議のデモをする様子。
3.10代の就職率が低下、シティミーティングが開かれ、高校生たちが集まった。
4.オバマ大統領が、3兆ドルの財政赤字を削減。

広告は、中規模ファーストフード、カーディーラー、ラスベガスのショーなど。American Tax Reliefといった節税サービスや、バイアグラなども、時間帯によって大量に入る。
テレビで節税サービスの広告が流れているのを見て、アメリカでは自己申告して税金を支払うことを思い出した。
税金を自分で払うと、国家、政府との関係性が体感的に変わる。政府は「お上」から「代理人としてパブリックサービスをする組織」になる。「Tax Payer」は、「納税者」より、「パブリックサービスの対価を払う人」という雰囲気だろうか。私も会社経営を経験してから、以前より無駄な道路工事を見るたびに無性に腹が立つ。それは、1票の行使より現実感のある感覚だ。民主主義は概念であり、資本主義は身体、日常だ。
ラスベガスのタクシーの運転手が「オバマは良いことをしているが、金持連中の賛同を得られず苦労している。金持ちはアメリカを自分たちの国だと思っているし、何でも好き勝手できると思っているんだ」と言っていた。教育予算カットのニュースで放送されたコメントは、「金持ちは益々金持ちになり、貧乏な人は苦しむだけ」というものだった。資本主義が民主主義より先行するとこんな側面もある。

民主主義と資本主義に対峙するテレビメディア


河尻さんが3/9ポストで、日本とチュニジア、エジプト情勢について「空腹」と「空虚」という視点で論じている。そして、私も「満腹なら街頭にでる必要はない」と書いている。街頭デモをしたネバダ州の高校生は、空腹なのだろうか。満腹なのに街頭にでているのではないか。
同ポストで河尻さんは、「コミュニケーションの“市場”において、すべてを見えざる手に委ねることはできないのでは?」と述べて「「共同性」や「リテラシー」は何が(誰が)担保するのか?」と書く。
新たなあやとらー矢野さんは、4/15ポストで「政府にCIOが必要」という提言をする。インターネットで情報を一元化し、オンデマンドで「正しい」情報が引き出せたら、メディアに取って変わる新たなシステムになろう。
アメリカでも日本でも、街頭で道を聞くと、人によって言うことが違う。案内掲示板も途中で消える。とにかく何人にも聞き続け自分で判断するしかない。約束に遅れて損をするのは自分自身だ。誰も責められない。表示が違うからといって抗議のために1票投じるより、自分の仕事を貫徹するのが日常なのだ。
現実空間では、誰しもCIOが担保した情報の正確よりも自分の内なる声に耳を澄ますのではないか。結局正しさは、外部ではなく自分の内側にあり、個人のリテラシーを磨いて獲得するものではないだろうか。税金の自己申告はそのことをいちばん体感させてくれる。納税額が違うのに、投票は1票しかないことを矛盾と感じるか、暴走しがちな資本主義のストッパーとして考えるか、バランスの問題ではある。
「国家の『時間』管理を超える現実が起きたときのテレビメディアのもつ緊張感」は、あやぶろで繰り返し論じられるテーマだが、災害、戦争などでない富者と貧者の静かな分離が拡大する『空間』も、政府の管理を超えている。同じ1票を持つ貧者と富者では、パブリックサービスへの期待が違う。正しさは一つではなく、人によって、どの現実『空間』に属するかによって違う。
統治する『空間』が多様化、分散化する国家、政府に対峙するテレビメディアは、もういっぽうの現実『空間』といかに折り合いをつけるのかが現在問われているのではないか。




志村一隆(シムラカズタカ)プロフィール
1991年早稲田大学卒業、第1期生としてWOWOWに入社。2001年モバイルコミュニティを広告ビジネスで運営するケータイWOWOWを設立、代表取締役就任、業界の先駆けとなる。2007年より情報通信総合研究所で、メディア、インターネットの海外動向の研究に従事。2000年エモリー大学で MBA、2005年高知工科大学で博士号
『明日のテレビ-チャンネルが消える日-(朝日新書)』、『ネットテレビの衝撃(東洋経済新報社)』が絶賛発売中。ツイッターは zutaka



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