「日本的土壌にみる、文字のチカラ」 矢野貴久子

 木原さんの「CMに感じた『ソーシャル』の日本的土壌」で紹介されていた3本のCMを見ました。木原さんもご指摘のように、着想と構成がしっかりしていて、これはもう、180秒なり90秒の立派なドラマ。

 どれもしっかり涙腺ゆるみました……。ずるいなーと思いつつ、やられてしまいました。

 新幹線が開通するワクワク感や誇らしさや、お弁当という誰にも共通した感情があるものを土台に、濃密な構成をしていくと誰の心もすっととらえることができる……『ヘイ ジュード』もみんなが知ってて感動できる歌だからこそですよね。

 そして、その共感がソーシャルのチェーンにのっていく……。これからのCMは、そこを意図してつくられるものが多くなりそうな予感がします。

 日本的土壌ということで考えてみると、俳句や短歌のように少ない字数に裏の裏まで情感をしみこませた文化が脈々とあるから、こういった濃縮した表現もうまくて、そこに感情移入できる私たちがいるのかな、と思ったりもしています。

 Twitterも、自分がやりはじめて思ったのは、きわめて日本語に向いているのではということでした。漢字一文字でも、感情を表現できてしまう。英語だと、説明しなくちゃいけないですし、読まないといけない。けれど日本語は、ぱっと見てそこに書かれているニュアンスが印象として先に伝わる。タイムラインが続々と流れてくるなかで、これは強いのではないかと思いました。

 考えてみれば、日本の2本のCMに私の涙腺がゆるんだのは、「文字のチカラ」も大きかったのでした。九州新幹線は、「祝!新鳥栖」とか次々出てくる駅名に。「祝!」ってなんてうまいコピーなんだよとうなりそうになりました。文字デザインもよかった。最後の「みなさんと一緒に」というセリフにもやられます。

 東京ガスは、それぞれのお弁当にこめられた短いメッセージ、たとえば「がんばってるで賞(笑)」などなど……。ひとつひとつ、自分が母にお弁当をつくってもらっていたころを思い出しながら、そして、自分の子どもはまだ3歳なのですが、来るべきお弁当戦争の日々を思いつつ、見入って(読み入って)しまいます。

 こういったところを「トラファルガー広場で歌う『ヘイ ジュード』」と比べてしまうと、細かな表現が格段に違うなとしみじみ。まさに、そこが日本的土壌なのかもしれません。



矢野貴久子(やの きくこ)プロフィール
14年の雑誌編集経験をへて1999年12月に株式会社カフェグローブ・ドット・コムを設立。働く女性のためのメディアサイトcafeglobe.com、ショッピングサイトSELECT Caféを運営。2004年よりデジタルハリウッド大学院客員教授。



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