"情報"から遠く離れて-手白沢の3日間と、フェイスブックを始めて思ったこと-  前川英樹

zEcRtwi3BN.jpg学生時代の仲間(男人4、女4人)が集まって、50年前に出かけた奥鬼怒のさらに奥まった手白沢温泉に行ってみようという話になった。50年前は、鬼怒川温泉駅からのバスは川俣温泉が終点で、そこから4時間近く歩いただろうか。宿はランプ暮らしで、夜は月明かり、星明かりの下で露天風呂に入ったものだった。


S_cC351vSe.jpg今回、誰が言い出したのか半世紀ぶりに行ってみようという話になって、ネットで調べてみた。宿はすっかりきれいになり、料理もモダンな感じで、ワインなども用意してあるらしい。アクセスも、川俣から2.5kmほど先の女夫淵(めおとぶち)までバスが行くという。切れ切れの記憶を辿りつつ、鬼怒川の渓流沿いの、時折急な登り降りはあるものの、2時間半程のトレッキングを楽しむはずだった。ところが、歩きだしてすぐに、崩落・落石で通行止めになっている道を迂回したはずが、どこで間違えたのか川沿いの道を離れて砂利だらけの車道を行く羽目になり、宿まで3時間かかかってしまった。
そういうこともあって、帰りは、しっかり川音を聞きながら遊歩道を楽しんだことは、いうまでもない。

私の学年を挟んで上下一年のメンバーだから、平均年齢は70歳、二日目も「日向オソロシの滝展望台」まで、結構な勾配の往復3時間半の山歩きを完歩したのだから、みんななかなか元気だった、特に、女性たちは。
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山は、空も草花も、秋の気配。空も木々も花々も、こんなに美しかったんだと、チョット感動した。
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温泉は、すっかり作り直してあったが、当時の雰囲気が活かしてあって、気持ちの良い、素晴らしい露天風呂だった。原泉掛け流し。
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この手白沢温泉の3日間、宿にテレビはなく(あっても地デジの電波は届くまい)、ラジオはAMもFMも入らない。客が利用できるインターネットもないし、モバイル系の通信手段もない。新聞は来ない。あるのは固定電話だけで(でも、宅急便は来る、情報よりモノが大事?)、世間の情報から遮断された時間を過ごしたのだった。幸い、直ぐに対応しなければならない大事件・大事故はなかったので、とりたてて不都合はなかった。

3.11を戸隠スキー場で経験したときは、「情報が欲しい」と心底思ったものだった。3.11とはそういう事態・時間・状況だった。
けれども、日常は3日間の情報との途絶も含んで流れて行く。「かつて、人はそのように生きていたのだから・・・」とは言うまい。何故と言って、私たちは、そのようには生きられない「今」を生きているのだから。だが、時には、情報と切れたある時間を過ごすのも悪くない、「情報とは何か」を考えるから。
さて、ほんの数日前にFace Book の世界に足を踏み入れてみてすぐに思ったのは、第一にFBの<いまなにしてる>に書き込む人たちは、何処かで誰かと<とても>繋がりたがっているということと、第二に<それ>を始めてしまうと止まらない、ある種の中毒症状に陥るらしいということだった。だから、FBという仕掛けは「横丁の隠居の小言」に向いているかと一瞬思ったものだったが、それよりも”Break”としてのFBという方が良いみたいだ。いま、人々はそれほど息抜きしたいのだろうか、とも思う。あるいは、チョットした自己表現としてのFBというのもあるらしい。
二昔前なら、つまりぼくが若かった頃、そうした関係性を「自己疎外」なんて呼んでいただろう。なるほどね、FBによる疎外からの関係性の回復か・・・などと、思ってみたけど、Face Bookの世界とは、そうした解釈よりも、参加するあるいは繋がることによる広がりの実感が大切なのだろう。自己表現の場があるというのは、何であれ確かに良いことだ。
新聞の、電信の、ラジオ・テレビの、ネットの、そしてモバイルの、夫々の登場以前と以後で世界が変わったように、ツィッターやフェイスブックの登場以後で、世界はまた変わろうとしているのかもしれない。
でもね、たまに情報のない世界で時間を過ごすと、風や光や自然の音が、人間にとってどれほど貴重な情報か、それを感じることができるのも大事なことなのだ。だが、”いま”(3.11の後)、それは贅沢な情報との関わりでもあるだろう。
手白沢から帰ってそんなことを思ったのだった。

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“せんぱい” 前川英樹


前川英樹(マエカワ ヒデキ)プロフィール
1964年TBS入社 <アラコキ(古希)>です。TBS人生の前半はドラマなど番組制作。42歳のある日突然メディア企画開発部門に異動。ハイビジョン・BS・地デジというポストアナログ地上波の「王道」(当時はいばらの道?)を歩く。キーワードは“蹴手繰り(ケダグリ)でも出足払いでもいいから NHKに勝とう!”。誰もやってないことが色々出来て面白かった。でも、気がつけばテレビはネットの大波の中でバタバタ。さて、どうしますかね。当面の目標、シーズンに30日スキーを滑ること。



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